TONEX トーンモデル計測 :マーシャルアンプ編
前の記事ではTONEXモデルを利用してFenderアンプの周波数を計測してみましたが、この記事はロックギターアンプのパイオニアであり象徴でもある歴代マーシャルアンプのTONEXモデルを計測してみることにします。
元祖Marshall、JTM45の計測
WikiPediaによればMarshallアンプの最初のアンプはFender Basemanにインスパイアされ1963年に誕生したJTM45ということですね。
The company first began making amplifiers to provide an alternative to expensive, American-made Fender amps, releasing their first model, the Bassman-inspired JTM45, in 1963.
ということでMarshallの歴史をたどってまずはJTM45をベースにしたプリセットの周波数特性を計測してみました。
AMG MRSH JT45 Clean BAL CAB / Clean / Marshall JTM45 1966

アンプモデルの周波数(緑線)をみるとFender Basemanを参考にしたということでそれほど極端なEQになっていないようですね。(Fender BasemanのTONEXプリセットはこちらで計測しています)
キャビの周波数特性(青線)はビンテージの1968年の1960ということでしょうか。
高域は2Kから5Kがピーク、低域は100Hzから200Hzあたりに共振ピークがあるようですね。
JIA JTM45 GB_1 / Drive / Marshall JTM45 1965 / 412 Green Back

このモデルはアンプの周波数特性(緑線)はかなりハイ側がブーストされていますね。
キャビは4発のGreen Backということですが、高域のピークは無いのですが、アンプと組み合わせてたアンプ全体での周波数特性(赤線)はギターアンプらしい5Khzまでの高域にピークがある音に仕上がっているようです。
コンボアンプBluesbreaker
ビンテージマーシャルのコンボアンプといえばBluesbreakerということになると思いますが、Wiki Pediaによればクラプトンは1964年から製造されたマーシャルのコンボアンプBluesbreakerアンプを使用したということです。
The Bluesbreaker, which derives its nickname from being used by Eric Clapton with John Mayall & The Bluesbreakers, is credited with delivering “the sound that launched British blues-rock in the mid-1960s.”[1] It was Marshall’s first combo amplifier,[2] and was described as “arguably the most important [amplifier] in the company’s history”[3] and “the definitive rock amplifier.”
4 BL – Clean A / Clean / Bluesbreaker / 212 Celestion 100

Bluesbreakerのアンプ部(緑線)は1KHzのミッドを中心としてなだらかな周波数に加えて、キャビの周波数特性(青線)は高域があまり出ていないようです。
つまりクラプトンのウーマントーンはこのアンプを使うことで更にダークなサウンドになるということでしょうかね。
MRSH JT50 Edge BRI CAB / Drive / Marshall JTM50 1967 / Marshall 1960A

JTM50ですが、こちらのアンプ部の周波数特性(緑線)はよりハイをブーストするセッティングでキャプチャされているようです。キャビ(青線)はフラットな特性ですね。
アンプ全体の周波数特性(赤線)を見ると高域が強調された現代でもバランスが良い音が出るコンボアンプになると思います。
PLEXIアンプの時代
そしてロックのギターサウンドはマーシャルアンプ、という名声を築いのはプレキシと言われるスーパーリードモデルということですね。
所謂3段積みのスタックアンプとしてジミヘン、クラプトン、ジミーペイジの3大ロックギタリストのサウンドメークしたアンプということですね!
These early amps were characterized in part by their Plexiglass control plates, leading to models such as the 1959 Super Lead (released in 1965) being popularly known as “Plexis.”
HG PLEXI / Hi-Gain / Marshall Super Lead MKII / Marshall 1960AV

アンプモデルの周波数特性(緑線)を見ると、もう極端なハイ上がりの周波数特性ですね。
このアンプでマーシャルアンプのサウンドを確立したということであれば、高域をブーストして歪を作るというのがマーシャルアンプ、そしてロックサウンドなのでしょう。
Super Crisp / Drive / Marshall JMP50W / Marshall 8X10

このトーンモデルのアンプ部の周波数特性(緑線)を見ると、フラットでやや高域がブーストされているようです。
一方でキャビの周波数特性(青線)を見ると60Hzという低域から5Khzまでかなりフラットな特性を持っているようです。今ならFRFRスピーカーという感じでしょうか?
総合的な周波数特性(赤線)はかなり素直なアンプになっているようです。
JCM800へ
Wiki Pediaによれば1980年代のロックアンプとしてあまりにも有名なのはJCM800です。
The JCM800 series (Models 2203, 2204, 2205, and 2210) is a line of guitar amplifiers made by Marshall Amplification. The series was introduced in 1981. Although models 1959 and 1987 had been in production since 1965 and the 2203 and 2204 had been in production since 1975, they were redesigned and introduced as JCM800 amplifiers in 1981. The JCM800 amplifiers became a staple of 1980s hard rock and heavy metal bands.
TONEXにはJCM800のトーンモデルが大量にアップされていますので、とりあえず気になったプリセットをいくつか計測してみました。
JCM800 1960 4X12 / Drive / JCM800 / Marshall 4×12 G12T75

アンプ部の周波数特性(緑線)を見ると2KHzから6KHzをピークにした典型的なハイ上がりの特性ですね。
そしてキャビの周波数特性(青線)もマーシャルの4発の典型的なハイとローにピークがある特性です。
総合特性(赤線)もロックなサウンドが出るアンプの典型的な特性ですね。
ACDZ / Drive / Marshall JCM800 / Marshall 1960BV

こちらのアンプモデルは更に高域をブーストして歪ませるセッティングのようです。キャビモデルはやはり4発のクローズタイプという感じですね。
DR800 / Hi-Gain / Marshall JCM800 / EVH 412ST

こちらはエレクトロボイスのユニットが搭載されたキャビのようで周波数特性(青線)を見ると100Hzより少し上のピークが強く、高域は大人しい特性のようです。
それを補うように極端なアンプ部の周波数特性(緑線)は更に極端なハイ上がりという組み合わせです。
キャビの特性とアンプの特性が逆で補完しているのが面白いです。
Marshall JCM800 2210 VIR – Clean / Clean / Marshall JCM800 2210 VIR / MHR 4×12 G12 VIR

こちらのキャビの周波数特性(青線)をみると、低音のピークがなくタイトな特性で高域もフラットな特性ですね。
全体(赤線)を見るとアンプ部の特性がそのまま現れた特性になっていますね。
2025-09-14 jcm800 hi G2 / Hi-Gain / JCM800 Mark Cameron / Marshall 1960 lead

こちらのアンプ部の周波数特性(緑線)を見ると、おそらくアンプのハイとローのノブを下げている状態でミッドレンジにフォーカスされている特性ですね。
まるでIbanez TubeScreamerの特性いんも似ていますね。
こちらがTubeScreamerを計測した時の記事です。
800LE / Hi-Gain / Marshall JCM800 / Marhall 1960BV

このモデルのアンプ部(緑線)を見ると、これまでのマーシャルより大人しい周波数特性にセッティングされているようですね。キャビの特性(青線)はマーシャル1960の4発のユニットの典型的な特性ですね。
BOULEVAR / Hi-Gain / Marshall JCM800 / Marshall 1960BV

こちらもマイルドな特性のアンプですね。実際はマーシャルでも極端なハイ特性のアンプとこれらのようにマイルドな特性のアンプを把握して、TONEXのトーンモデルのプリセットを使い分けるのが良いと思います。
My Marshall Clean / Clean / Marshall JCM 800 4210 / Marshall 4210 50W Combo

JCM800のコンボモデル4210です。
キャビの周波数特性(青線)をみるとやはり4発のスタックキャビとは違って低域はタイトになっていますね。
更に、アンプ部の周波数特性(緑線)も低域に行くにしたがってタイトな特性にしています。
結果的に(赤線)かなり低域はかなりタイトで高域が目立つアンプのようですね。
ジョン・フルシアンテといえばSilver Jubiliee
マーシャルアンプにもいくつかあるキーワードの1つ、2555XというJCM800から派生で1987年に25周年モデルとして限定リリースしたシルバージュビリーも把握したいトーンモデルですね。
while the brand celebrated its 25 years of making amps by releasing the Silver Jubiliee in 1987.
Fruciante Clean Tone / Clean / Marshall 2555X Silver Jubiliee / Marshall 2551AV Silver Jubiliee

こちらのモデルはまさにジョンフルシアンテの名称が付けられている2555XSilver Jubiliee ということです。
アンプモデルの周波数特性を見ると(緑線)ややマイルドな高域と低域がセッティングされていて、ハイがよく出ているキャビモデル(青線)を引き立てるバランスのよいアンプモデルに仕上がっている(赤線)ようですね。
90年代、JCM900
90年代になりJCM800を継ぐロックアンプJCM900が登場したということですね。Wiki Pediaより
Further development led to the JCM800 series in 1981, which was widely adopted by the hard rock and metal community, while the brand celebrated its 25 years of making amps by releasing the Silver Jubiliee in 1987. Marshall updated the JCM lineup in the 1990s (JCM900)
JCM900 / Drive / Marshall JCM900 / Marshall 1960

JCM900になってもJCM800で確立されたハイ上がりのアンプモデル(緑線)と、100Hzあたりにピークが出るスピーカーユニット4発のクローズタイプのキャビ(青線)の王道の組み合わせとなっているようです。
JCM900 / Drive / Marshall JCM900 / Marshall 1960

このモデル(赤線)を見るとミッドの1KHzから極端にブーストブーストされているモデルですね。
Nine Hundred Degree / Hi-Gain / Marshall JCM900 / Marshall 1960 JCM900

このモデルは、ミドル、ハイが抑えられたトーンセッティングがされているようです。同じJCM900の名前が付けられているトーンモデルでもこのようなセッティングがされているものがあるのが今回確認できて良かったポイントだと思います。
2000年代のJCM2000から現代のモデルへ
80年代のJCM800、90年代のJCM900の系譜を引き継ぐのはJCM2000ということで、このモデル名からも感じされますが一気に近代的なアンプになっていることを感じます。
Marshall JCM2000 TSL 100 Clean / Clean / Marshall JCM 2000 TSL 100 / Marshall 1960 Vintage

やはりマーシャルアンプらしいハイ上がりのアンプ部(緑線)と、100Hzにピークがあるキャビ(青線)の組み合わせですね。
JIA – JVM410 CH1 02 / Clean / Marshall JVM410H / Marshall 1960BX GB

アンプ部の周波数特性(緑線)を見ると低域が20Hzよりも下まで伸びているのが印象的です、まさに現代的なアンプを感じます。
一方でキャビの周波数特性(青線)を見ると、JCM800やJCM900と同じような特性ということで、マーシャルの4発キャビネットは2000年代でも健在という感じですね。
katsubo JVM210C / Drive / Marshall JVM210C / CELESTION HERITAGE

JVM210のコンボモデルということで、やはりキャビの周波数特性(青線)はスタックキャビと比べると低域がタイトになっていますね。
そしてアンプ部の周波数特性(緑線)はもう極端なローカットになっており、また高域も抑えられたセッティングのようです。結果として赤線を見るとミッドハイ中心としたタイトなサウンドになっているようです。
おまけ:現行のマーシャルアンプ達
マーシャルのリイシューモデルも最近多いですね。また日本の家庭事情にもぴったりの小型アンプもしっかりとマーシャルの魂は受け継がれたサウンドになっているようです。
Slammin Marshall 1959 C T1 N2V / Marshall 1959HW / CAE 4X12 Jensen Neodyum

Marshall Super Leadを現代に再現したモデルMarshall 1959HW はその名前の通り英国でハンドワイヤで組み立てられたもののようです。一方でキャビはスピーカーユニットはネオジウムマグネットということで、ビンテージと現代の技術」が融合した最新のアンプということですね。
Marshall Silver Jubilee Mini OD / Clean / Marshall Silver Jubiliee Mini OD / Greenback

おそらくStudio Jubilee 2525Hという20Wのミニジュビリーアンプのトーンモデルということでしょうね。
キャビはおそらく小型のものなのでかなりタイトな周波数特性(青線)ですね。
更にアンプ部の周波数特性(緑線)を見るとこちらも高域に行くに従った一直線に上がっていくタイプということで、かなりハイ上がりのアンプとなっています(赤線)
MG10 Clean / Clean / Marshall MG10 / Marshall MG10 Combo

MG10は10Wの小型トランジスタアンプで6.5インチの小型ユニットが搭載されており、主に自宅での練習用アンプということです。
キャビの周波数特性(青線)をみると低域は200Hz手前に共振的はピークがあるようですが、他のマーシャルコンボアンプと違ってちゃんと低音を出すためのユニットのようです。
アンプ部の周波数特性(緑線)を見ると、しっかり1Khz以上がブーストされているようで、マーシャルサウンドが再現できながらも少音量でもしっかりと低域が感じられるように設計されたアンプと思われます。
流石小型とはいえちゃんとマーシャルブランドのギターアンプということですね。
マーシャルアンプのTONEXトーンモデル計測まとめ
Fender Basemanの回路から生まれたJTM45はやはりBasemanを受け継ぐフラットなサウンドでした。
そしてその後ロックギターの象徴的なサウンドを確立したSuper Lead所謂プレキシアンプ、そして、世界中のロックギタリストに今でも愛用されている3段スタックアンプの帝王であるJCM800/JCM900/JCM2000に至るアンプは、いずれも高域側を強烈に再生するそれに低域と高域にピークを持つクローズタイプの4発キャビネットの組み合わせが象徴的なロックギターサウンドになっていることがなんとなく判りました。
TONEXのアンプモデルはまさにアンプの歴史まで記録している貴重な財産になりつつあると感じました!
それが体験できるのTONEXのエコシステムのすばらしさですね!!