RAT回路のお勉強 – オペアンプで音は違うのか?同じなのか?
前の記事ではRATの回路テスト用に作成した基板(CabaPedals RATest)で4種類のオペアンプを特定の条件で試してみました。
条件はオペアンプでの増幅部だけにして、できるだけ余計なフィルタ回路を外して計測してみました。
こちらの記事です。
その結果周波数特性の計測結果には4種類のオペアンプの差は現れてきませんでした。(下のグラフは4本のオペアンプの周波数特性がほぼ重なって1本に見えますね)

RAT回路でのオペアンプの特性を調べてみた
ということで次にRATの回路を用いて計測してみます。

上の回路図に1KHzの正弦波を入力しR15の抵抗がDISTORTIONのポットで0の時と5(12時)の時の周波数特性を計測してみました。
そのときDISTORTION=0の時の入力レベルは-10dBu、DISTORTION=5の時の入力レベルは-30dBuにしています。
入力信号を下げたのはオシロスコープとFFTを観察してDISTORTION=5の時も正弦波に近い信号が出るようにするためです。(それでも若干歪み始めている状態です)
つまり出来るだけ歪んでいない状態での周波数特性を調べています。
さらにFILTERは0、VOLUMEは固定にして、オペアンプだけ入れ替えて計測しています。
Texas Instruments OP07 vs Motorola LM308MN

現行のProCo RATに採用されているTexas Instruments OP07を基準(黒線)にしています。赤線がMotorola LM308Nです。
DISTORTION=0が上側のフラットな周波数特性のグループ。DISTORTION=5が山形になっている周波数特性のグループになっています
400Hz以上で差が出ていますね。
Texas Instruments OP07 vs National Semiconductor LM308N

緑線がNatiolal Semiconductor LM308Nです。
こちらも400Hz以上で差が出ていますね。
Texas Instruments OP07 vs Texas Instruments TL061

青線がTexas Instruments TL061です。
LM308系よりも、OP07の周波数特性に近いようですね。
ProCo 回路での4種類のオペアンプ周波数特性まとめ

- Texas Instruments OP07 黒線
- Motorola LM308MN 赤線
- National Semiconductor LM308N 緑線
- Texas Instruments TL061 青線
DISTORTION=0が上側のフラットな周波数特性のグループ。DISTORTION=5が山型になっている周波数特性のグループになっています。
やはり2種類のLM308はほぼ同じ特性ですね。
それに対してRAT回路でのOP07はフィルタ周波数がやや高域にシフトした音になるようです。
さらにTL061が高域側にシフトしているのが面白いです。
前の記事では4つのオペアンプの周波数特性に差は出てきませんでしたが、RATの回路では4種類のオペアンプでは差が出てきました。
ということで、オペアンプで音が変わるのか?という論争がありますが、今回の計測結果してみると、オペアンプのスペックシートに記載されている帰還回路においては(オーディオ信号帯域では)オペアンプの違いで大きな違いはない。
ところが、フィルタ回路を付けたり、歪み領域に近い場合はオペアンプの違いで音は違って来る場合もある。
オペアンプによって音が違うのか?はどっちも正解のように思えてきました。
ということで次の記事ではオペアンプによる歪み方の違いについても掘り下げて行きたいと思います。