ProCo RAT2を計測したら改めて名機であることを再認識できました(使いこなしが必要?)
我が家の押し入れに格納されていたProCo RAT2を引っ張り出してきていろいろ試しています。
この個体はモトローラー製のLM308Nというオペアンプが搭載されているところから1990年前後の個体だと思われます。

DISTORTIONツマミ最小で使えるのかを確認してみた
TS系のペダルなどではGAINやOVERDRIVEを最小にしてブースターとして使うという方もいらっしゃいますが、RATで同様のことが出来るかまず確認してみました。
まずトゥルーバイパス時の確認で-20dBuをオーディオIFから出力しています。
-20dBu=Peak0.11Vでオシロのメモリが500mVなのでこんな感じ確認しました。

次にRAT2のDISTORTION=0 FILTER=0にした状態でオシロ波形を確認して音量を確認しました。

非常に見にくくて申し訳ありませんが、結果的にRAT2はVOLUME=10つまりフル状態でもバイパス時に比べ90%の音量となりました。
次にこのDISTORTION=0の状態での周波数特性を確認してみます。
下のグラフの緑線がバイパス時、赤線がRAT2(DISTORTION=0、FILTER=0、VOLUME=10)をONにした時の周波数特性です。

4KHZ前後はバイパス時と同じ音量ですが、高域と低域がほんの僅かに減少しているようです。
次に1KHzの信号を入力した時の倍音の発生(歪み)を観察する為にFFTを見てみます。

基音の1KHzが-20dBu二次倍音が-80dBuなのでギターのサウンドとしてはクリーンという感じだと思います。
このようにRAT2でDISTORTION最小ではやや音量が小さくなるようなので、実際にクリーンブースターとしては使いにくいペダルということになります。
ただし、DISTORITIONをわずかに上げると途端に音量が出ますが、歪みはじめるのでまずはクランチブースターとして使えるようです。
次にDISTORTIONを上げて行きながら歪の変化を確認してみたいと思います。
DISTORTIONツマミ2くらいからRATとして本領発揮しはじめるみたい
DISTORTIONツマミ=1.52くらいまで出力はまだ正弦波を保っているように見えますが。(入力は-20dBu)

その時のFFT分析はこちら。

2次倍音と3次倍音が追加し始めていますね。
よってRAT2はDISTORTION=2(だいたい)で歪み始めるという感じでしょうか。
そしてこの時の周波数特性を確認してみます。FILTERを10段階で上げて計測します。
RAT2のFILTERツマミは右に回すとハイカットになるのが特徴です。

ちなみにプロット線が8本しかないのは、0と1で全く変化なし、9と10でほぼ変化がなかったのでこういう結果になっています。
RAT2のトーン回路は単純なローパスフィルターですが400Hzから500Hzの間あたりの周波数からカットする特性のようです。
DISTORTIONツマミ2.5くらいからクリッピング波形が見えてきた
そしてDISTORTIONツマミ=2.5(だいたい9時=真横あたり)になると明らかにクリッピングが発生します。

この時のFFTで倍音を見てみたいと思います。

RATは対象配置のダイオードによるハードクリッピング回路らしく奇数次倍音が発生していますね。
そしてある程度の偶数次倍音も発生しているのも特徴のようです。
次に周波数特性を計測してみますが、ここから入力信号を-20dBuから下げて計測します。

DISTORTIONツマミを5でディストーションっぽくなる
DISTORTIONツマミを5(12時)に上げるとよりハードなクリッピング波形となります。

この時のFFTはこんな感じです。

奇数次倍音が高域まで盛大に発生していますが、やはり同時に偶数次倍音も増えているのがRAT2の特徴なのかもしれませんね。
この時のFFTはこちら。

DISTORTIONツマミを7.5になると波形は飽和してFuzzっぽく?
DISTORTIONツマミを7.5(12時)に上げるとよりクリッピングされているというかほぼ矩形波になりまさに飽和状態になっているようです。そしてこれ以上DISTORTIONツマミを上げても波形は殆ど変化しなくなりました。

FFT取ってみましたが、DISTORTIONツマミが5の時からほとんど歪マックスだったのでそれ以上だと倍音の出方もあまり変わらないようです。

更に周波数特性を計測してみます。

DISTORTIONを上げるにしたがって高域のゲインが削られこのようなミッドフォーカスなトーンカーブになりますね。
この特性から激しく歪んでいながらも耳に痛くない音色を実現しているのが判ります。
DISTORTIONマックス!!
DISTORTIONツマミを10つまりMAXにしても7.5の時と見た目の波形は変わりません。矩形波になっているのでゲインを上げても波形の形状に現れないということでしょうね。

FFTはこんな感じです。

この時の周波数特性はこちら

更にミッド中心でゲインを上げているのが判ります。
FILTERツマミを5に固定してDISTORTIONツマミでの周波数特性変化を確認してみた
ということで、FILTERツマミを5に固定してDISTORTIONツマミ2.5、5、7.5、10を上げて行った時の周波数特性を抽出してみました。

RATのゲイン回路のDISTORTIONツマミはオペアンプのゲインをコントロールすると共に周波数特性も変わって行く回路ということですね。
せっかくなので、DISTORTION 2.5以上でFILTERを10段階に変化させたときの周波数特性の全部のプロット纏めたのがこちらです。(DISTORTION 2.5以下はゲインが低すぎて同じスケールで計測できませんので)

ProCo RAT2 特性まとめ – ポイントは繊細かつ多彩なDISTORTIONツマミ
- DISTORTIONを最小の時は音量に注意
- VLOLUMEを全開にしてもバイパスより音量がやや低いので避けたい。DISTORTIONの最小値は1.5あたりから使える。
- DISTORTIONを2あたりのスイートスポット
- FILTERをゼロにするとやや高域がカットされながらもフラットに近い周波数特性になる。
- この時-20dBu(±0.1V)あたりまで歪まないので、ピッキングの音量でコントロールできるクセの少ないクランチサウンドになる筈(ギターの出力によって違うけど)
- DISTORTIONツマミが2(3時あたり)から5(12時あたり)は気持ちの良い歪コントロールが可能
- 2KHzをピークにしたトレブルブースターで歪ませたようなオーバードライブになる。
- 但しFILTERで高域を削れるので、ミッドハイが気持ちがいい、オーバードライブディストーションサウンドになる。
- またギター側のボリュームのコントロールで歪もリニアにコントロールできるので多彩な音作りが可能な領域
- DISTORTIONツマミ5以上で太い歪みが作れる
- ミッドレンジを中心にゲインが上がるようになる。
- FIRTERでハイカットも調整することで、所謂太い歪サウンドという感じでしょうか?
- DISTORTIONツマミが7以上でFuzzっぽく
- 波形が飽和する。更にローミッドのゲインを上げているのでミッドからローが飽和したFuzzっぽいサウンドになる。
ということで、ProCo RATの回路はDISTORTIONツマミの位置で周波数特性と歪特性がガラリと変わる特性に加えてFILTERのハイカットを組み合わせることでオーバードライブからFUZZ的に多彩な音作りが出来るペダルということが(個人的に)改めて判りました。
回路自体はオペアンプ、ハードクリッピング回路のDISTORTION+にトーン回路を加えただけのように見える回路にも見えますが実際に演奏してみると、より多彩というかギタリストがコントロール出来る要素が増えているまさに名機と確実に言えるエフェクターの1台と思います。
ただ、そのクセというか特性を身に着けない間はどのように使うべきか迷ってしまうペダル(私的にはそうでした)なのかもしれませんね。
計測していてとても楽しかったです!!