RAT回路のお勉強 – 終段バッファ2N5458は音に影響する?

RATEst バッファJFETの検証基板 #ProCo #Rat
RATEst バッファJFETの検証基板

相変わらずRATの回路について擦りまくっていますが今回は終段バッファで使われているN-ch JFETの音への影響を考察するポスト第二弾です。

検証第一弾の素子単体での測定の記事を振り返る

第一弾のポストはこちら。2N5458素子単体で計測して違いを見ています。

RAT回路のお勉強 – JFET出力バッファ2N5458は重要かも
RATの歪でもクリッピングダイオードが重要ということが判りましたが、RATではクリッピングダイオードを安定動作させる為(トーン回路も)と思われるバッファ回路が付加されています。2N5458いうNチャンネルJFETが使われていますが深堀りしてみました。

製造メーカーやロットが異なる3つの2N5458のId/Vgs特性を計測してみるとかなり大きな違いが現れました。

なので、今回はこの#1と#3の2N5458に加えて代替JFETとしてJ112を題材にして実際のRAT回路でどのように動作しているかを測定して検証してみます。

検証方法

RATはオペアンプ>クリッピングダイオード>バッファの順番で構成されていますが、オペアンプは±3.5Vくらいで飽和し歪み、クリッピングダイオードは±0.7Vあたりでクリップします。
なのでもしJFETバッファが±0.7V以下で飽和するとバッファでも歪むことになります。

テストはRAT検証基板のRATestを使いました。終段のバッファJFETをソケットで差し替えてられるようにして、JFETがどれくらいの信号レベルで飽和するかを確認します。

RATEst バッファJFETの検証基板
RATEst バッファJFETの検証基板

手順はこんな感じ

  1. クリッピングダイオードをOFFにして、オペアンプが飽和しない範囲で増幅率を段階的に上げて出力波形を観察。
  2. JFETで飽和するレベルを確認。
  3. 参考としてクリッピングダイオードをONにして波形の変化を観察

前の記事の#1と#3を使ってみますが、まずは怪しい#3の個体から見てみます。

2N5458#3 の測定

オペアンプの増幅率を上げていくと2N5458ではこのようにマイナス側が歪み始めました。

2N5458 #1 - No Clip
2N5458 #1 – No Clip

次にこの状態でクリッピングダイオードをONにしてみます。

2N5458 #1 - Clip
2N5458 #1 – Clip

するとわずかに上下の波形のクリッピングが開始されていますが、マイナス側は2N5458でも飽和していますね。
つまり、2N5458#3はマイナス側は-0.7V以前に飽和が発生していそうです。
つまりこれをRATに使うとオペアンプ+クリッピングダイオード+JFETバッファの3段階で歪みが作られているということです。

2N5458#1 の測定

前のテストと#3が歪みはじめたオペアンプのゲインと同じ設定でクリッピングダイオードOFFでの波形を観察してみます。

2N5458 #2 - No Clip
2N5458 #2 – No Clip

この2N5458#1は歪んでいませんね。

そして、クリッピングダイオードをONにした波形がこちら。

2N5458 #2 - Clip
2N5458 #2 – Clip

クリッピングダイオードで上下の波形が綺麗に圧縮されました。

この2N5458#1をRAT回路に使うと、終段のバッファでは飽和せず歪が発生しないということですね。(実際はRATバッファ回路は単純なのでほんのわずかに歪んでしまうのですが)

J112 の測定

オペアンプのLM308と同様に、バッファ回路の2N5458もディスコンとなっていますので、入手が困難になっています。
ということで2N5458と同じ脚配列で、現在比較的安定して入手できるN-ch JFETとしてJ112がありす。(秋月電子通商は千石電商でも購入することが出来ます)

こちらが、同じゲインでクリッピングダイオードをOFFにした時の波形

J112 - No Clip
J112 – No Clip

2N5458 #1と同様にJ112のバッファでは歪んでいませんね。

クリッピングダイオードをONにしてみます。

J112 - Clip
J112 – Clip

ということで、2N5458 #1と同じようにバッファで歪は発生しないようです。

J112を更にプッシュしてみる

RATestのクリッピングダイオードをOFFにしてJ112が歪み始めるポイントを把握してみました。(はみ出してしまうのでボリュームを下げてオシロの画面に収まるようにしています)

J112 - Over Load - No Clip
J112 – Over Load – No Clip

この状態でクリッピングダイオードをONにしてみます。

J112 - Over Load - Clip
J112 – Over Load – Clip

このようにクリッピングダイオードを使うと±0.7Vあたりでクリッピングされますが、±J112の飽和はそれよりずいぶん余裕があることが判りました。
クリッピングダイオードがある限りJ112は歪みませんね。

まとめ

今回の観察で以下のことが判ったと思います

  • 2N5458は製造メーカー(製造ロットも?)によって大きく特性が違うものがある
    • Id/Vgs特性でVgsが急激に増加している2N5458#3はマイナス側がすぐに飽和し、RATの回路ではその影響ある。
    • 一方でマイナス側が飽和しにくい2N5458もある。
  • J112をRAT回路で使うと歪まない領域で動作する。

ということですがオーディオ的にみるとバッファは歪まない方が良いとは思いますが、どうなんでしょうね。RATは歪みペダルなんですよねw
なのでRATで音が良いと言われている個体はどのような特性の2N5458が使われているのでしょうか。分解して特性を計測する必要があるので確認が難しいですね。

ということで、いまやオペアンプのLM308と同じく、2N5458もデッドストックを入手するしかありませんが、LM308&2N5458を使ったクローンだからといってオリジナルと同じ音が出るかというと、今回の検証の結果として更にそれは言えないという感じになってきました。

オペアンプ、コンデンサ、そしてJFETの違いも動作に影響するということで、RATのクローンは難しそうですね!

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