これまでのRAT回路オペアンプについてお勉強したこと
普通の増幅回路ではオペアンプでそれほど差はない
まずこのシリーズではProCo RATで使われているオペアンプ単体の増幅回路でまずはオペアンプの推奨スペックに近い条件で動作の違いを確認してみたところ、LM308もOP07でもほぼ差が無いということを確認しました。
RAT回路のお勉強 – テスト基板CabaPedals RATest作って4つのオペアンプを計測してみた
RAT回路ではオペアンプによって差が出てきた
次に、RATの回路で各オペアンプを動作させた結果、オペアンプによってEQ特性に差が出て来たことを確認しました。
RAT回路のお勉強 – オペアンプで音は違うのか?同じなのか?
オペアンプを高ゲインで使う時はスルーレートが違ってくる
更に次の記事では再びオペアンプのだけの基板を準備してLM308/OP07のスルーレートの違いを観察した結果、異なる製造メーカーは勿論同じメーカーで同じロットの(と思われる)LM308でも結構な差が出て来ることを確認できました。
RAT回路のお勉強 – LM308/OP070の飽和とスルーレートをオシロで観察
ということで次のステップとして、結局RATはオペアンプで音が変わるのか?についてオペアンプによって発生する倍音パターンを調べてみることにしました。
今回のテスト条件
RAT回路のテスト基板RATest(クリッピングダイオード1N914、後段バッファ2N5458)を用いて下記パターンでFFTによる周波数分布を観察します。
テスト基板はこちら

テスト条件とパターンはこちら
- 1Khzのサイン波
- 入力レベルは-30dbu、-20dbu、-10dbuの3パターン
- DISTORTIONツマミを1と3くらいの2パターン
- DISTORTIONツマミを固定して6種類のオペアンプを入れ替えFFTを実行
前回のスルーレートのチェックに続いて、リファレンスとなるMotorola LM308AN、そして同じロットのLM308AN以外は、各オペアンプの製造メーカーを伏せさせていただきます。(どのオペアンプが良いというステレオタイプの拡散するとご迷惑かけそうなので)
それではFFTの観察結果を見て行きます。
DISTORTION=1 – クランチセッティングでの観察
DISTORTIONツマミが1ですので入力レベルが低い時はわずかに倍音が発生し、入力レベルが高くなるとクランチになる設定です。
Input = -30dbu / Distortion = 1

6種類のオペアンプがそれぞれ異なる倍音構成を示していますね。
YYYとZZZが似ているますが、それぞれ異なる倍音構成となっています。
Input = -20dbu / Distortion = 1

RATでは入力レベルが大きくなると、基本的に偶数次倍音の方が増えていく特性です。
これはオペアンプで上下非対称で飽和しはじめる状況が反映されていると思われます。(クリッピングダイオードでのハードクリップも加わっている)
ただ面白いのは右上のLM308は偶数次倍音が発生せず奇数次倍音だけ増えているいます。
OP07も奇数次倍音が増えていくパターンです。
Input = -10dbu / Distortion = 1

さらに-10dbuまで入力レベルが上がると奇数次倍音が追加されます。
これは、オペアンプで上下が均等に飽和しさらにダイオードによるハードクリッピングでされたことで奇数次の倍音が増えて来たということだと思います。
RATクランチセッティングでいったんまとめ。
典型的なLM308でDISTORTIONが0から1あたりまでは
- クリーンから最初に偶数次倍音が発生
- 次に偶数次倍音が増加
- 更に入力レベルを上げると今度はダイオードのハードクリッピングによる奇数次倍音が発生
これは、前の記事で計測した結果として、LM308が飽和しはじめると波形は非対称となり偶数次倍音が発生、オペアンプの出力レベルが大きくなると±0.7Vのダイオードのクリッピングが加わることで上下対象のクリッピングとなり奇数次倍音が加わることでこのような動作になるようです。
ただ同じ製造メーカーのLM308でも偶数次倍音が発生しない(波形の上下が対象的に飽和する)個体があるのが面白いですね。
またOP07は最初から奇数次倍音が発生しているのも特徴のようです。
DISTORTION=3 ディストーションセッティングでの観察
ProCo RAT回路の特徴はめっちゃ高いゲインでオペアンプが飽和領域(オペアンプが歪まくっている)で動作しているということです。
前のテストではDISTORTIONツマミが1の状態(オペアンプであまり歪まないように)でテストしていたのですが、次はDISTORTIOを3にして低い入力レベルからオペアンプをがっつり歪ませた状態からスタートするテストです。
Input = -30dbu / Distortion = 3

入力レベルが-30dbuという小さい信号でもオペアンプの出力は±で3.5Vあたり増幅します。
その結果クリッピングダイオードで波形の上下0.7Vでハードクリッピングされた結果、奇数次倍音が中心になるということですね。
Input = -20dbu / Distortion = 3

更に入力レベルが上がると、YYYとZZZのオペアンプは偶数次倍音の割合が高くなりました。
これはオペアンプの飽和が更に深くなりデューティー比が対称でなくなる(上下の矩形波形の長さが異なる)状態になるようです。
Input = -10dbu / Distortion = 3

更に入力レベルが大きくなると偶数次倍音と奇数次倍音も盛大に発生する結果になるようです。
ただし、右上のLM308だけはそうなっていないのがかなり面白いですね。
RATディストーションセッティングでいったんまとめ。
DISTORTIONツマミ3以上では低い入力レベルではダイオードによるハードクリッピングの影響が強く、その結果奇数次倍音が発生、その後、オペアンプの飽和が深くなるにしたがって偶数次倍音の比率が高くなるようです。
そしてクランチセッティングでは偶数次>奇数次 と倍音変化するのに対し、ディストーションセッティングでは奇数次>偶数次 の倍音が発生するの面白いですね。
このことを頭に入れておくとRATの使いこなしとしても良いかもしれません。
DISTORTIONツマミ3以上で起こることもついでに
ちなみに、今回のテストではDISTORTIONツマミ3まででしたが、それ以上DISTORTIONを上げても倍音構成はあまり変化しませんでした。
その代わり
- DISTORTIONを3以上に上げるとオペアンプのスルーレートが低下>高域のゲインが低下
- 帰還部の100pの効果が増え高域のゲインが低下
- オペアンプ増幅部のキャパシタ+抵抗のEQ特性が強まり中域がブースト
という動作になりますので、DISTORTIONツマミを上げるにしたがってより太いく中域にフォーカスされたディストーションサウンドになっていくということになります。
そんなRATのEQ面での奥深さはこちらの実機の計測で観察しました。
まとめ
いかがでしょうか?今回の記事のお題は『オペアンプで音が変わるのか?』ということでしたが、ProCo RATの回路ではオペアンプで音が変わるとしました(あくまでも当社比ですので間違っていたらすいません)
- 異なる製造メーカーのLM308は飽和領域で(当然)異なる動作を示す。
- 同じMotorola LM308でも個体によってまったく異なる飽和領域の動作を示している。
- OP07の動作はLM308と違う
ということで、RAT回路はオペアンプを差し替えるによって音が変わる場合が多いようですが、ビンテージRATを再現するには伝説のMtorola LM308Nを入れちゃえばハッピーというわけでもなさそうです。
RAT回路でオペアンプテイスティング遊びをするには各メーカーのオペアンプをできればそれぞれ5個以上入手して遊ぶ方が面白いかもしれません。
またその時、ブラシーボではなく絶対的に(相対でもよいのですが)テストするには相当の訓練された耳が必要と思われます。(私は耳が悪いので視覚化してみました)
また、今回の一連の実験を通して、RATのDISTORTIONツマミ3以下とそれ以上、更に5以上でそれぞれ使いこなしポイントがあるということも判ってうれしいです。
ありがとうございました


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