なんと、Xのお仲間繋がりでビンテージのRAT Large Boxをお借りさせていただくことができました!ありがとうございます。
早速、基板や筐体の観察をさせていただきました。
シリアル番号の確認で製造年を特定
まずは筐体裏に貼ってあるシリアル番号から確認します。

シリアル番号はRT-01XXXXということで、Bella Voce Gibsonのサイトにシリアル番号とオペアンプの記録のサイトで年代を調べることができます。(ありがとうございます!)

RATのシリアルは1978年から始まるようですが、この個体のシリアル番号からすると1979年製というかなりの初期モデル、まさにビンテージRATということですね。
基板
ガラスエポキシのようですが、当時のMXRなどが使っていた紙フェノール基板よりコストが高いことからProCo社はよりハイエンド向けのメーカーだったんでしょうかね。

オペアンプ LM308N
National Semiconductor社製のLM308Nが使われていました。

RATのLM308N言えばMotorola製が音がいいという話題が多いのですが(私も油断しておりましたが♂️)初期モデルのBIG BOX – Large BoxはNational Semiconductor(ナショセミ)製が使われているようです。
ちなみに、こちらの記事でも言及させていただきましたが、歴史的にはLM308を製品化したのはナショナルセミコンダクタ社です。

よって、初期のRATがナショセミのLM308を使うのは当然の流れかもしれません。
そしてその後、ProCo RATにはモトローラー製のLM308がながらく使われていたのは入手性(入手経路なども)やコスト的な判断だったのかもしれませんね。(私見です)
バッファJ-FET 2N5458
RATの終段バッファと言えば2N5458ですが、この個体もMotorola製が使われていました。

クリッピングダイオード
RATのクリッピングにはシリコンダイオードが使われていますが、ネット情報を確認すると1N914あるいは、1N4148ということですね。

で、このダイオード確認してみると、、、、下の写真の右側のダイオードに48という記述がスタンプされていますね。


そして次の写真では41という数字がスタンプされているように見えます。


ということでこの個体のクリッピングダイオードはどうやら1N4148のようです。
ちなみに1N4148は1N941を軍用・産業用として規格が厳格化(高性能化されたわけではない)したもので同等品のようです。
1N914はTIが1960年に発表、1N4148は1968年に規格化され1970年代には省電力のスイッチングダイオードとして市場では標準品として広く流通されたということです。
コンデンサ
オペアンプ周りのコンデンサ
オペアンプ周りの小容量コンデンサはセラミックコンデンサが使われていました。

- 入力のデカップリング(パスコン)0.001μF
- LM308の位相保証コンデンサ 33pF
- オペアンプ帰還の発信防止(おそらく)及びEQ調整 100pF
カップリング用、トーン用のフィルムコンデンサ
所謂クロレッツと呼ばれている緑色のマイラ(ポリエステル)フィルコンデンサが使われています。

- 入力のカップリング、バッファ回路のカップリング、0.022μF(22nF)
- Filter用トーン回路のローパスフィルタ 0.0033μF(3.3nF)
- 電源の高周波側のデカップリングコンデンサ 0.01μF
MXRではこれらも安価なセラミックコンデンサが使われていることもあるようで、その欠点としては温度依存性が大きいのでフィルタなどには向かないのですが、ProCoではちゃんとフィルムタイプが使われているのが真面目ですね。
電解コンデンサ
汎用品の電解コンデンサが使われていますね。
ネットで公開されている多くのRATの基板を見ると特定のメーカーの電解コンデンサが使われているわけではなく部品調達の時点で一番入手しやすいものが使われていたと思われます。
ちなみに自作など体験されている方はオーディオ用の電解コンデンサの方が高性能というイメージかもしれませんが、調べて見るとオーディオ用の電解コンデンサは1980年代日本のオーディオブームが起点となり高級オーディオの(マーケッティング上の?)差別化の為にELNA、Rubycon、ニチコン、パナソニックなどがオーディオ的な性能を向上させたコンデンサを出し始めたということですので、それらがProCo社などのUSAのエフェクターメーカーがこの時代に採用することはなかったようですね。
まぁ近年でブティックメーカーやビルダーの方にはオーディオ用電解コンデンサが人気なようですが(基板に高級感が出ますし)大手メーカーがオーディオ用に手を出すの例は少ないとは思います。
抵抗
一般的なカーボン被膜抵抗のようです。
ポテンショメーター(可変抵抗)
DISTORTION、FILTER、VOLUMEと3つの24 mmのポットが使われていますが、当時のMXRなどの欧米のエフェクターも24mmのポットが使われていますね。

またビンテージRATの最大の特徴は基板にポットとフットスイッチが基板にナットでダイレクトにマウントされ更に筐体に締結されていることで設計も素晴らしく合理的です。

おそらくCTS製とのようですが、今となってはCTSの24mmポットは高価なので、こちらも個人ビルダー以外ではなかなか同じものを使う例も少ないのではと思います。
やはりビンテージエフェクタとして24mmポットは見た目がかっこいいですね!w
フットスイッチ
この形状はCarling製なのでしょうか、今一般的なAlphaなどの3PDTフットスイッチとは異なるヘビーデューティな外観がカッコいいですね。
2PDTなのでLED点灯に対応しておらずトゥルーバイパスとなっているようです。

配線
前述のように基板にポットやフットスイッチがダイレクトマウントされていますので配線は非常にシンプルですね。
線材としてはPVCの拠線や裸単線が使われていますが、もう45年以上前の配線ですから、すでこれもビンテージワイヤですね!w
ジャック類
ボックスタイプのが使われていますが、50年前のSwitchcraft製なのでしょうかね。(間違っていたら申し訳ありません)現代のものとは形状が違うので判別できません。

また電源のDCジャックはMXRなどと同様に3.5mmミニプラグのものですね。

筐体
スチール製の薄板のシートメタル板金タイプです。


また、ボルトの受け側のタッピングがほどこされたパーツも溶接されています。このような筐体を作るには結構の手間や工数が掛かっている筈です。

そして下部側のボックス形状はシートメタルの板金で、スポット溶接で組み立てられています。

これを上部側のL字のパーツとボルトで締結するわけですが、上面にボルトが見えているなど実務的な面から電気設備の小型コントロールボックなどの作り方に見えます。

このようなシートメタルのケースをみるとProCo社は音響関連のメーカーだったようなので、納得できますね。
そして後継のSmall Boxの筐体では、より分厚いスチールでスポット溶接が不要のシンプルな形状の上下を組み合わせたものですね。

強度の向上、低コスト化した上でデザインを両立したスマートなストンプボックスらしいデザインに変更されたのが今日もで流通しているRATということになると思います。
まとめ

今回貸していただいLarge Box / BIG BoxのビンテージRATを観察してみて色々勉強させていただきました。ありがとうございます。
- LM308の開発&製造元であるNational Semiconductor製が使われていている。
- その後主流となるMotorolaのLM380よりも貴重&レアなオペアンプが使われている。
- ちなみにその後NS製のLM308が搭載したモデルも現れたが白いラインが入るなど別の外観をしている。
- クリッピングダイオードが1N4148なのを確認できた。
- ネットで公開されているRAT回路図では1N914も多いようです。
- RATの基板の基本デザインはこの初期モデルの時点で確立されていた
- ボリュームポットとフットスイッチと共に固定される構造
- Small Boxではこれを少し小型の筐体に押し込んだもので、今に至るRATのアイコンとなっていますね。
ということで、僭越ですが作りやデザイン面からも元々プロ用機材を製造販売していたProCo社ならではのディストーションボックスに対するアプローチが垣間見られました。
次の記事ではパーツの測定などしたいと思います。
