お借りしている1979年製のProCo RATをまずは、外観と基板の観察、次に可変抵抗器の抵抗値の計測を行いましたが、今回はDISTORTIONの設定によるEQ特性の変化について調べてみました。
こちらが1979年製RATの観察記事

バイパス時の周波数特性
まずはバイパス時の周波数特性です。

80Hz以下の極低域で減衰が見られますね。
ProCo RATは完全なトゥルーバイパスでないのがこの原因でしょうかね。
ただギターの周波数帯域は80Hz以上なのでこの減衰で音痩せなどの問題は発生しないと思います。
DISTORTIONツマミを変化させた時の周波数特性
DISTORTIONツマミを変化させた時のEQの変化を確認してみました。
計測方法
- 10Hzから22KHzまでのスイープ信号をRATに入力しDISTORIONツマミを上げて行った時の周波数特性を計測します。
- 0%がツマミがゼロ、100%がツマミが全開
- 0%, 6.3%, 12.5%, 25%, 50%, 62.5%, 75%, 87.5%, 100%で計測
- 歪が発生すると周波数特性の計測ができないので、入力信号(Inputのdbu値)を調整して(下げて)THR値(歪率)が2%以内になるレベルを入力信号にしています。
- カーブを比較しやすいようにVOLUMEを調整して周波数特性のピークをバイパスと同じレベルに揃えます
全計測結果のグラフ

この計測結果を観察すると、RATのDISTORTIONツマミの前半と後半でEQ特性が変わる傾向が現れます。
前半の0%から25%をオーバードライブ領域、後半の25%から100%をディストーション領域に分けて観察してみます。
RATオーバードライブ領域のDISTORTION EQの周波数特性
こちらが0%から25%の周波数特性です。

ツマミが6.3%あたりまでの周波数特性はフラットでやや高域が持ち上がる特性です。このあたりで歪みの発生が聞き取れるようになります。
よってツマミをゼロからわずかに上げた状態ではブースター的な周波数特性ですが、音量はさほど稼げないですね。
次に6.3%から12.5%ですが、このグラフではVOLUMEツマミを下げて音量調整しているので低域がカットされるように見えますが、実際は1KHz以上のトレブルブースター的な挙動を示します。
このあたりでいきなり音量もアップしますのでまさにオーバードライブブースター的な使い方が出来るようになります。
そしてツマミが25%を超えると、グラフでは高域が減衰して行く、つまり実際はEQがミドルに集中して行きます。またこれ以上になると歪みもディストーション的になって行きますので。25%以上ではまさにディストーションペダルになるわけですね。
RATディストーション領域のDISTORTION EQの周波数特性
そしてこちらが、DISTORTIONツマミが25%から100%までの周波数特性です。
ちなみに、計測結果が荒れているように見えますが、これは歪が発生しないように入力信号を極小の状態で計測していますので、ゲインが高くなるとノイズフロアが上がってくるためその影響が結果にプロットさているようです。

ツマミが25%超えるとこのようにミッドのピーク周波数が下がって行くように見えますが、この理由としては以下のことが推測できます。
- 高域側の増幅率が相対的に下がる
- オペアンプのLM308Nの増幅率を上げて行くと、スルーレートが悪化することで高域が出なくなる
- LM308Nの帰還に入っている100Pのコンデンサの影響が強くなる
- 低域側も増幅するようになる
- EQ増幅率を決定する2.2μ+47Ωと4.7μ+560Ωの関係はローゲインでは2.2μ側(高域側)の増幅比率が高いが、ハイゲインになると100KΩのポットに対して両方の比率が近づいてくることで低域の増幅比率も高くなる
LM308のスルーレート計測の記事はこちら

TONEツマミを変化させた時の周波数特性
次にTONEツマミを変化させた時の周波数特性も計測しました。
Small Box RATやRAT2のFILTERツマミは右の回すと高域が減少するというちょっとトリッキーなコントロールとなっていますが、今回の1979年生のBIG BOX / Large BOX RATのTONEツマミでは、右側に回すと高域が出るという慣れ親しんだコントロールです。
計測方法
- 0%がツマミがゼロ、100%がツマミが全開
- 0%, 12.5%, 25%, 50%, 62.5%, 75%, 87.5%, 100%で計測
- 前の章で、RATにはオーバードライブ領域とディストーション領域があるということで、TONEのノブの動きも2つの領域に分けて計測してみました。
RATオーバードライブ領域のTONE EQの周波数特性
DISTORTIONツマミが6.3%、つまりわずかに上げた状態にしてTONEツマミを変化させてみました。

TONEツマミ全開(100%)からTONEツマミを左に回して行くと、12時(50%)当たりでフラットに近い特性(やや高域が減衰)になるようで、素直なローパスフィルターによるTONE調整が出来ると思います。
一方で、37.5%以下では聴感上あまり変化がしないように聞こえますが、この計測結果からもそれが読み取れます。
RATディストーション領域のTONE EQの周波数特性
DISTORTIONツマミが50%、つまり12時でTONEツマミを変化させてみました。

この結果を見ると、2KHzから3KHzのハイミッドの量がコントールされているように見えます。
よって、ディストーション領域のTONEツマミの素直なローパス量のコントロールではなく、ミッドレンジのコントロールに見えます。
勿論、回路的にはローパスフィルターですが、DISTORTIONのEQと帯域が重なっていることでこのようになるということですね。
1979年 Large Box / Big Box RAT EQ特性まとめ
まずこの時点で理解できたのはRATは音決めがやや見難しいペダルという印象もありますが、このようにオーバードライブ領域とディストーション領域の違いを覚えておくと、少し理解が出来るようになりました。
- オーバードライブ領域 – DISTORTIONツマミ 25%未満
- トレブルブースター的なオーバードライブ
- TONEは素直なローパスフィルター量の調整
- 但し12時以下では効きが悪くなるように感じる
- ディストーション領域 – DISTORTIONツマミ 25%以上
- ミッドレンジにピークがある特徴があるディストーションサウンド
- DISTORTIONツマミを上げるとミッドのピーク周波数が下がって行くように聞こえる
- TONEはこのミッド量の調整的な動きになる
- 但し12時以下では効きが悪くなるように感じる
今回は1979年製のビンテージ Large Box RATの基本特性を計測させていただきましたが、今後手持ちのProCo RAT Small Boxも計測することでビンテージRATが特有の特性を有しているかを少し掘り下げてみたいと思います。
追記:LTspiceでDISTORTION-EQをシミュレーションしてみた
LTspiceでDISTORTIONによるEQ変化をシミュレーションしてみました。

上のグラフはDISTORTIONツマミを上げていくと実際にゲインが上がりながらEQが変化する様子です。
一番上のラインは100KΩの時ですが、その下に実測値の86.6Ωの時のシミュレーション結果です。
また一番下のラインは0Ωの時ですが、その上に実測値の23.7Ωの時のシミュレーション結果です。
ポットの実測値に関する記事はこちら

シミュレーションでもDISTORTIONの可変抵抗の誤差はそれなりに現れるようですね。
こちらがその記事

でこちらが今回のEQ実測値(ピークの上限を合わせています)

ということで、シミュレーションのグラフと実測のグラフを見ても、今回の計測がかなり近い値になっていることが判りました。よかったです
追記2:LTspiceでTONE-EQをシミュレーションしてみた
更に、TONEの方もシミュレーションしてみました。
オーバードライブ領域でのトーン特性

ディストーション領域でのTONEツマミシミュレーション

これらのシミュレーヨンにもRAT実機の可変抵抗器の測定情報を入れてみましたが、残留抵抗の影響はそれほどないようでした。

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