ご厚意によってお借りしている1979年製のビンテージProCo RAT Big Box/ Large Boxですが観察と計測などを行いました。

ということで今回は私が所有しています1994年製 RAT White Face Reissue をGAINとそのEQ特性について計測してみます。
Gain/EQ特性の計測
計測方法
比較方法はDISTORTIONツマミを合わせて周波数特性を計測します。計測方法は以下の通り。
- 2つのRATのDISTORTIONツマミを25%、50%、75%、100%に設定し計測
- 計測ソフト側でTHDが3%以下になるようにInput Levelを調整
- 計測結果のピーク値が揃うようにRATのVOLUMEを調整
ちなみにRATのツマミはあくまでも目視なのでズレる場合があるかもしれません。
Large BoxとWhite Face ReissueのGAIN/EQ計測結果比較
計測結果のグラフは(赤線)1979年RATと(黒線)1994年RATのDISTORTIONツマミを回した時の周波数特性です。

このグラフを見ると、赤線つまり1979年Large Boxの方が常に周波数のピークが左側に来ていますね。
ところでこれまでの計測でボリュームポットには必ず誤差がありズレが発生しているということもご報告しています。

今回の計測結果もこれはポット誤差だけが要因なのでしょうか?さらに考察してみます。
RATのDISTORTIONツマミはEQも変化するので
RAT回路のDISTORTIONツマミはゲイン(増幅量=歪み量)を調整すると共に、周波数特性も同時に変化するということをお勉強していました。
つまりDISTORTIONを増やすと、ピーク周波数も下がって行きます。

よって、1979年Large Boxと1994年White Face Reissueが同じピーク周波数になるように調整してみます。
DISTORTIONツマミを調整して両機のEQを揃えてみた
まず基準はDISTORTIONの位置が50%=12時で計測した後に、White Face Reissueの方のDISTORTIONツマミを上げ同じEQ特性になるように調整します。但し、歪み量も増えますので、計測ソフトでペダルに入力するInput Levelも下げTHD(歪み量)が2%以内になるようにします。

そして計測した結果EQピークがだいたい同じになったのは
- 1994年RATのDISTORTIONを50%→60%に上げる
- Input Levelを-30dbu→-32dbuに下げる
という状態です。
つまり1994年White Face Reissueの方がオペアンプ回路でのゲインが高いということですね。
またWhite Face Reissueのグラフ形状(EQ特性)がより鋭い形状になっています。
ESRの違いをシミュレーションを使って確認してみた
この違いは何から生じているのか?
RATのゲイン回路の中で最も影響が大きい2.2μFと4.7μFのコンデンサのESR値に着目してシミュレーションしてみました。

これら2つのコンデンサは比較的ESR(等価直列抵抗値)が大きい電解コンデンサなので、この値を設定してシミュレーションしてみます。

- 赤線-2つの電解コンデンサのESR値を20Ωに設定
- 青線-2つの電解コンデンサのESR値を5Ωに設定
実測結果に近いグラフになったように思えます。
1979年製の電解コンデンサ
ここから推測ですが、1979年製RAT Large Boxの電解コンデンサのESR値が大きい可能性があります。
もし1979年製のRATのクローンを作る場合は、これらの電解コンデンサのESRをむやみに低いものを使わない方が良いかもしれません。(音が良いこととは別)
1979年製RAT Large Boxの電解コンデンサを観察すると当時の小電力用の電解コンデンサ(ブランド不明)が使われているようです。(こちらの記事)

一方で1994年製のRAT White ReissueはXICON製の電解コンデンサが使われていました。
ということでESRの違いが発生する可能性以下の推測をしてみました。
- 製造メーカーの差
- 個体差
- 電解コンデンサは±20%の誤差が出る可能性があります
- 1979年から1994年の15年間の間で電解コンデンサの性能(ESR値)が向上している
- ESRが小さい方がコンデンサ(キャパシタ)の特性が良いとされています
- 1979年は47年前の製造、1994年は32年前の製造、なので経年変化が出ている
- 電解コンデンサは経年変化が発生します
もちろん、ESRではなく、静電容量値の違いも影響している可能性が大いにあります。
またオペアンプ、関連する抵抗も同様に個体差、誤差、経年変化がある可能性もありますが電解コンデンサはこれらの違いが大きく出るところでもあります。
TONE / FILTER特性の計測
次にRATのEQ特性を決めるトーン回路の特性を計測してみます。
RATでもトーン回路のポットが逆
同じProCo RATでもトーン回路の名称とツマミの回転方向が逆になっていますね。
- 1979年製Large Box RATはTONEツマミで左に回すとトーンが減衰
- 1994年生White Face ReissueはFILTERツマミで右に回すとトーンが減衰
Large BoxとTONEとWhite Face ReissueのFILTERの計測結果

赤線がLarge Box、黒線がWhite Face Reissueです。
今回はEQ特性の観察なので赤線と黒線は重なっているか否かはあまり問題ではありません。
そもそも操作の回転方向が逆ですし。
2機種のトーン特性がほぼ同じということは
注目は最も高域を減衰した状態で2つのRATはほぼ特性が重なっているということです。
FILTER/TONE回路はこのようなシンプルなローパスフィルターの調整になっていますので、ここのコンデンサは同じ特性を示しているということですね。

このコンデンサは両機ともに3.3nFのポリエステルフィルムコンデンサです。
フィルムコンデンサは経年変化が少ないと言われていますので、1979年製も1994年製も同じ特性ということだと思います。
まとめ
いかがでしょうか?
1979年製ビンテージRATと1979年製の音の違いの一つとして(おそらく)ゲイン部分のコンデンサの特性の違いによるEQ特性の違いがあることが推測できました。
- DISTORTION(オペアンプGAIN+EQ)の特性は両機で若干異なる
- 電解コンデンサの影響が出ている可能性がある
- TONE回路のローパス特性は同じ。
- ただし両機のトーンは逆回転なのでツマミを同じ位置にして比較はできない
いかがでしょうか?
次回はやはりオペアンプ部分の違いも計測してみたいと思います。

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