シミュレーションでお勉強:元祖ハードクリッピング MXR Distortion+のルーツを確認した
そうだ次はハードクリッピング回路を見てみようと思い立つ
ここ最近は、TS系のペダルの歴史を辿りながら、シミュレーションをしてきました。
TS系の基本はオペアンプの帰還回路にクリッピングダイオードを仕込むことで(波形上は)ゆるやかなクリッピングを行うソフトクリッピング回路、そしてそれはオーバードライブと呼ばれるエフェクターに分類されると思います。
そしてもう1つのクリッピング方式として、オペアンプで増幅した信号を一部アース流すことで上下の波形を切り取るハードクリッピングと言われるダイオード配置がありますが、こちらはディストーションと呼ばれるケースが多いペダルに使われることになります。(必ずしもそうでないものも多数ありますが)
で、ハードクリッピング=ディストーションとなったのは、歴史に残る銘ペダルとなったMXR Distortion+ の名称がそのままそうなったのは確実だと思います。
JHSさんの動画でハードクリッピング歪みペダルのルーツを予習
ということで、まずはJHSの動画1970’s Op-Amp Distortionでオペアンプ・ハードクリッピング回路のペダルを予習しました。
こちらの動画ですね。
- 1950年代、真空管アンプをプッシュすることでオーバードライブさせることが始まった。
- 1962年最初のFUZZペダル Maestro / Fuzz Tone FZ-1A
- トランジスタをオーバーロードすることでこれまでに無い新しいサウンドが得られた。
- 多くのレコーディングで使われ、音楽を革命的に変化させた。
- 1968年 オペアンプが発明
- 1970年代から登場するディストーションペダルに使われることになる。
- 当初は1970年代初頭はMXR Microampなどのクリーンブースト回路として使われた。
- その後。クリーンブースターの出力にダイオードクリッピングで信号の一部を切り取り、ユニークな歪みを作れることになる。
- 1973年〜1974年 MXR Distortion+ とDan Armstrong BlueClipperが登場。
- いずれもハードクリッピング回路のディストーション。
- Dan Armstrong BlueClipperがロンドンで発売、それMXRの営業担当者が立ち寄った数ヶ月後に MXR Distortion+ が発売とされていいるが、この話をMXRは否定している。
- どちらが先に設計したのかなど、当時の信頼出来るドキュメントも残って無い。
- 結果的にはMXR Distortion+の方が多くのギターショップで販売され、殆どのプレイヤーが手にし、多くのレコーディングに残された。
- MXR Distortion+はこれまで最もコピーされたペダルの1つである。
- 1974年 Gretsch ControlFuzz
- FUZZと書かれているが、MXRやBlueClipperと同じ回路。
- 1975年にローランドがBeeGeeをリリース
- 本当に素晴らしいハードクリッピングペダル。
- 他のペダルには無いローランド/BOSS独自のインプットとアウトプットセクションが設けらている。
- 素晴らしいクラシックロックサウンドを生み出すペダル。
- 1977年DOD OverDrive Preamp250リリース
- 最近リイシューした。
- DODはこのペダルを1973年に発売したとしているが、おそらく間違っている。
- 最初期の日付けが書かれていた灰色筐体のペダルには1977年と記されている。また内部のパーツの日付も1976年と記述されている。
- 1977年 Guyatone ZOOM
- OverDrive Preamp250クローン
- 1977年 DeArmond Square Wave Distortion Generator
- 1977年 ROSS DISTORTION
- MXR Distortion+が基本
- 1978年 ProCo Ratがリリース
- 回路設計者はMXR等のディストーションペダルをモディファイしていた人物。
- このペダル以降多くの人がこの回路を学習し続けている。
- 1978年12月 BOSS DS-1
- これまで紹介して来たいくつかのペダルをルーツに持つ素晴らしいハードクリッピング回路。
- 1978年12月 BobTronics BOBULATOR
- 1979年 Coron Distortion 15
- それ以降のハードクリッピングペダル
- Marshall The Guv’nor
- JHS Pedals Angry Charlie
- Pelican Noiseworks and 60 Cycle Hum 50/50
- JET CITY AMPLIFICATION Shockwave Distortion
- IBANEZ SD9M Sonic Distortion
- Keeley DS-9
- FullTone OCD
- Big Ear nyc Woodcutter
- Walrus Audio Iron Horse
- KLON CENTAUR
- 重要なのはこのペダルについて多くの人がTSタイプのソフトクリッピングだと思っているがそうでは無いということだ。
- Marshall The Guv’nor
いかがでしょうか? ということで長くなりましたが、今回はまずはMXR Distortion+を元祖オペアンプハードクリッピングディストーションペダルとしてシミュレーションしてみます。
MXR Distortion+のシミュレーション回路図
オペアンプは」LM741で、クリッピングダイオードは1N34になっていますので、オリジナルとまったく同じというわけではありませんが、他のパーツも試してみましたがまぁ傾向は変わらない感じですのでご容赦ください。
オペアンプもシングルで出力信号をダイオードでクリッピング、入力にも出力にもバッファやブースト回路も付けられていないめっちゃシンプルな回路ですね。
MXR Distortion+ 周波数特性
DISTORTIONツマミ(つまりゲイン)を0からMAXに上げた時の周波数特性です。
ゲインが半分くらいまではほぼフラット、それ以上は2KHzを中心としてブーストする感じですね。
MXR Distortion+ 波形とFFT
これらのプロットもDISTORTIONツマミを0からMAXまでゲインを変化させた時の波形です。
波形を見ると、もう上下バッサリという感じですね。
またFFT(周波数分析)を見ると、いずれのゲインでも2次倍音がまったく出ておらず、3次倍音からスタートするのが特徴だと思います。
ゲインを上げて行くと3次倍音以上が持ち上がって来るのが判りますね。
参考動画
デジマートの製品レビュー動画でMXR Distortion+のスクリプトロゴのリイシュー版が試奏されていました。
欲しい!(^^
まとめ
MXR Distortion+ はオペアンプ黎明期に出た最もシンプルな回路で歪を作っているのですが、基本的にゲインを変化させても倍音の構成は同じということが判りました。
FuzzFaceやTonePenderがゲインによって様々な倍音構成に変化するのとは全く違う機械的な歪みが得られるということですね。
また FuzzFaceやToneBender が2次倍音を大きく発生させるのに対し、MXR Distortion+のハードクリッピング回路は2次倍音を殆どというかまったくい発生させないところが特徴のようです。
ただ、ゲインを変えて行くと2KHzという最も美味しい領域をブーストさせてブーミーにもトゲトゲしくにもならないような工夫がも感じれます。
ということでMXR Distortion+は、それまでのトランジスタFuzzに対して、ちょっと面白みが無い代わりに安定した歪みが発生する回路ということですね。
ということで、次回からはハードクリッピング回路がどのように進化して行ったかをシミュレーションで確認してみたいと思います。
MXR ( エムエックスアール ) / M104 DISTORTION+
Walrus Audio ( ウォルラスオーディオ ) / IRON HORSE LM308 DISTORTION V2
FULLTONE ( フルトーン ) / OBSESSIVE COMPULSIVE DRIVE オーバードライブ
BOSS ( ボス ) / JB-2 Angry Driver
RYRA ( ロック・ユア・リペアード・アンプ ) / The Klone Gold
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