#エフェクターBOSSDS1

シミュレーションでお勉強:やっぱBOSSはすごい DS1 は単純なディストーションペダルで無いことが判った


ハードクリッピングディストーションペダルをシミュレーションしてみる4機種目は日本のBOSSが最初にリリースし今も大人気のBOSS DS-1です。

これまでの結果は以下の通りです

  • MXR Distortion+ :典型的なオペアンプで増幅した信号をダイオードでハードクリッピングする回路。
  • ProCo RAT:オペアンプ+ハードクリッピングの二段で歪みを作る回路
  • Roland AF-60 BeeGee:初段トランジスタ+オペアンプ+クリッピングダイオードの三段で歪みを作る回路

それではDS-1はこれらのどの回路に似ているのでしょうか?それとも違うのでしょうか?
シミュレーションの結果をご報告いたします。

BOSS DS1のシミュレーション回路

こちらがDS-1のシミュレーションに用いた回路です。DS-1は初期型と再販型があるようで今回は再販型の回路を参考にさせていただいております。

DS-1が一旦生産終了したのは(おそらく)初期型で採用されていたシングルオペアンプTA7136(など)が終了したため作れなくなったのではと予測しています。
その後再販型では、デュアルタイプのオペアンプが使われていますが、そのうち1つは増幅率1の(つまりバッファ)回路として使われていました。(無くても基本変わらない)

これも予測ですが、この回路には抵抗もコンデンサ必要無く、ノーコストで実装できますので遊ばせておくのも勿体無いので追加されたのかとも思います。

次にBOSS DS-1は BOSS最初のペダルとして画期的なFET電子スイッチが採用されたのですが、そのFETスイッチを安定動作させるために悪名高い?入力&出力バッファ回路が搭載されたのではと予測しています。

しかし実はDS-1ではこの入力バッファも音質的にかなり重要の役割があるということも判りましたので最後に記述します。

BOSS DS-1の歪みを分析する

でDS-1の回路の特徴は、初段のトランジスタ増幅回路(上の図の②の部分)なので、②初段トランジスタの出力部の波形(黄線)、③オペアンプの出力波形(青線)、④ハードクリッピング後の波形(赤線)、の各部分の波形を出してみます。 

更に入力レベルを増大させながら見て行きます。

まずはギターの出力を20mVのとき、DISTツマミを変化させた時の、②、③、④です。

初段のトランジスタ(黄線)は歪んでいません。ですがオペアンプ(青線)がやや歪み始めていますね、そしてダイオードクリップ(赤線)し始めるという絶妙の状態になっています。

次に入力が50mVの波形を見てみます。

初段のトランジスタ(黄線)はをよく見ると上下の波形が非対処になりはじめました。
そして、オペアンプ(青線)は飽和し始めているようですが未だ余裕がある状態、一方のダイオードクリップ(赤線)はしっかりとコンプレッションの仕事しており大きく歪んだ方形波に近い出力となります。

次に入力が100mVにしてみます。

ここで初段トランジスタの波形のマイナス側でクリップが始まりました。
オペアンプも余裕が無くなり飽和気味になっています。
ダイオードクリップも常にクリップしている状態です。

次に入力を200mVにします。

初段トランジスタはや限界に達して上下がクリップしてますが、非対称クリップしているということが見れます。

更に入力を500mVしてみます。

初段トランジスタも完全に飽和状態ですが、非対称波形は継続されています。

このようにDS-1は、入力値によって、初段トランジスタ、オペアンプ、ダイオードクリップで発生させる歪みのバランスがダイナミックに変化することが判りました。

初段のトランジスタ>オペアンプ>ダイオードクリップの順でダイナミックレンジが広いので初段でピッキングニュアンスに反応出来るということですね。

BOSSはOD-1で非対称クリップによって真空管のようなオーバードライブ回路を作りましたが、実はDS-1もそうなっています。更にDS-1の前身であるBeeGeeも非対称クリップですので、まさにこの時代にそれを追求していたことが予測出来ます。

そしてこの特性を実感するにはDISTツマミとギターのボリュームコントロールのベストポイントを探る必要がありそうですね。

DS-1の初段トランジスタの役割を見てみる

上の波形分析でも大方判ったと思いますが、初段トランジスタはDISTツマミとは関係無く、入力値だけで歪みの深さがコントロールされます。

ですので初段トランジスタだけに着目して、入力値の方を変化させてたグラフを纏め、これをFFT(周波数分析)にかけてみます。

こちらが、入力値を赤>10mV、青>20mV、黄>50mV、薄青>100mV、紫>200mV、灰>500mVとした時の初段トランジスタの波形まとめです。

そしてFFTするとこんな感じ、、、もう驚くほど綺麗な倍音発生機になっていますね。

特に注目なのが、2次倍音が入力に応じてリニアに発生していることです。
一方の3次倍音は、入力値と発生量が逆転の関係になっている時もあるのが面白いですね。

とにかく、DS-1の初段トランジスタは、お飾りでは無く、倍音発生回路ということが判りました。

ProCo RATでは初段トランジスタを使わなくてもオペアンプだけで高い増幅率出来ていたのですが、それでもDS-1がわざわざ部品コストを掛けてまでも初段トランジスタを配置した理由は」、まず初段で豊富な倍音を作るため、特に2次倍音、4次倍音などの偶数時倍音を発生させる為に追加さているということは確実だと思います。

DS-1の出力波形

さて一応ですが、DS-1の最終波形を見るとこんな感じです。(DISTは12時方向、TONEはやや下げの11時方向にしています)

下の図がDS-1全体のFFT分析です。

初段で発生した2次倍音がそのまま活かされているという感じですね。ただ、それ以上の倍音は入力レベルに応じて複雑に上下関係を変えているので、表情豊かな変化になっているのも読み取れます。

この、初段トランジスタによって2次倍音を発生させるのは、前回のBeeGeeで実現されていたことです。下の回路図のように初段に同じような定数のトランジスタ増幅段が配置されていますね。

このようにBeeGeeのトランジスタ+オペアンプ+ダイオードクリップの歪み回路がBOSS DS-1にしっかり引き継がれているということですね。

DS-1はトーン回路もかなり個性がある

TONEノブを動かした時の周波数特性のグラフを出してみました。トーンのポットを1〜10(MAX)で動かしています。

TONEが0(赤)〜3(黄色)で300Hzのミドルベースがブースト(かつトレブルの増幅が減少)されます。
4(薄青)が一番フラットですが、両側に山がありちょっとドンシャリ。
5(紫)以上では今度は3KHzのトレブルブースト(かつローの増幅が減少)になります。

つまり、DS-1のTONEは半分から下がミドルベースだけブースト、半分より上がトレブルだけブーストという左右で異なるブーストを行うという、まるでジキルとハイドのような音作りになるということです。

DS-1の入力バッファもかなり重要だった

ここまでのシミュレーションの入力は、ギターやシールドを考慮していない純粋な信号をでやってきましたが、最後にギター+シールドも含めてシミュレーションします。

加えて、巷では(^^不要と言われているかわいそうな入力バッファ回路を外してみて比較してみます。

下のグラフの、一連の赤線が通常のDS-1(入力バッファあり)にギターを入力したときのトーンの変化。
そして青線がDS-1からバッファを外した回路での一連のトーンの変化です。

なんと、バッファが無い場合は明らかにトレブルが激減することが判りました。

このようにDS-1回路は入力バッファにってギターの周波数特性とシンクロさせることで高域のピークが更に強調されるようになっています。

よくDS-1がジャキジャキの音になると言われているのがまさにここに現れていると思います。

なので、自作派の方がDS-1を作られる時はトゥルーバイパスなのでバッファ回路不要だろうというご意見もあるかもしれませんが、できれば考慮した回路構成にされた方が再現性が高いと思います。

ちなみに、出力側のバッファの有無では大きな変化は見れませんでした。

BOSS DS-1 シミュレーションまとめ

今回のDS-1お勉強のまとめは、、、、

  • Roland BeeGeeを引き継いだ、独自のトランジスタ+オペアンプ+ダイオードクリップの3段歪み発生回路。
  • MXR Distortion+やProCo RATが出せない2次倍音が出せる。
    • 但しギターのボリューム設定とピッキングを意識しないと宝の持ち腐れ
  • ミドルベースブーストからトレブルブーストに切り替わる使いこなしが難しいTONE回路
  • DISTは12が中心、TONEが11時が中心で音作り
  • 入力バッファ回路も重要なのでトゥルーバイパスで自作される場合は注意

DS-1はBOSSで最初に生まれた歴史のあるエフェクターですが、過去の遺産的であり、低価格で、入門的なペダルであると認知されていることが多いと思いますが、シミュレーションして見るとかなり複雑で動作を行っている使いこなしが難しいディストーションエフェクタであることが判りました。

おそらく、ここまで人気があるのは価格が安いだけでは無く、スイートスポットにハメることが出来た方は他のペダルでは出せない歪みが作れるペダルであると思います。

また、最近のモデルは表面実装パーツで作られるようになり、ブラックの40周年記念モデルも出るなど更に将来においてもレジェンドのペダルとして継続しそうで、もうBOSSを代表する、いやディストーションを代表するナンバーワンのエフェクターと言えるかもしれませんね!

動画で見るBOSS DS-1の特徴と魅力

さすがPlayer誌のレビューは的確ですね。

BOSS DS-1 40th記念モデル試奏動画。最新モデルでもDS-1の特性が失われていないことが判ります。

BOSS TalkでDS-1が全世界で今でも人気で売れているということを確認。

サウンドハウスでBOSS DS-1を購入





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