シミュレーションでお勉強:Roland AF-60 BeeGeeのハードクリッピッグ回路、実は凄かった!
ハードクリッピングお勉強会の初回であのJHSが素晴らしいオペアンプディストーションのレジェンドエフェクターとして紹介されていたRoland AF-60 BeeGeeを、夏休みの予習お勉強でシミュレーションしてみました。
Roland AF-60 BeeGeeの回路図とシミュレーション条件
で、BeeGeeの回路は一見オペアンプを用いたMXR Distortion+にゲインを上げる為にトランジスタのブースト回路を追加しただけ、に見えるんですが、シミュレーションするとそれほど単純なものでは無いことが判ってきました。
今回それを説明させて頂けるように下の回路図のように、①~⑤の部分の波形を観察させて頂きます。
(話が長くなって申しわけありませんがお付き合いお願いいたします。)
オペアンプは741タイプなのでLM741で代替、トランジスタは2SC1000のデータはなかったので同じようにhfeが高めのトランジスタということで2N5210で代替、クリッピングダイオードは1N4001を適用しました。
代替なので厳密には違うかもしれませんがこの回路の傾向は十分に出て来ると思います。
で検証方法ですが、BeeGeeにはゲイン(ディストーション)ツマミがついていないので、今回はペダルの入力値を、10mV、25mV、50mV、75mV、100mV、250mV、500mVに変化させてシミュレーションしてみます。下の図はその色分けです。
②初段トランジスタの出力波形と周波数分析を見てみる
初段トランジスタを通過後の出力波形を見てみます。
凄い波形ですね。もう1段目から歪みまくってます。
ちなみにこのようないびつな波形になっているのは、後段回路からのフィードバックの合成波形ですね。
この1段目の出力時点の周波数分析してみると下のグラフになります。
で、初段のトランジスタでは大量の偶数次倍音が発生するようになっているんですね。
他のダイオードで対象クリッピングするペダルは奇数次倍音が発生するのが基本です。
その一方、FuzzFaceは常に偶数次倍音も奇数次倍音も豊富に発生している回路です。
なのでBeeGeeで初段トランジスタが追加されているのは、やはりFUZZサウンドを作る為に偶数次倍音が必要だったということが予測できます。当時RolandはBeeGeeをFUZZであると言ってるんですよね。
で一応、後段の影響を排除して波形を観察するために、この初段トランジスタ増幅回路のみ切り出してシミュレーションしてみましたが、やはりここで偶数次倍音を発生させていることが判りました。
よって、BeeGeeはダイオードクリッピングの前に、できるだけ偶数次の歪を作って後段をプッシュするという回路構成になっているようです。
③オペアンプを通過した後の波形と周波数分析
さて、次にオペアンプの出力を見るとProCo RATのお勉強会で判明したようにBeeGeeもオペアンプで積極的に歪ませているようです。(というかRATよりもBeeGeeの方が先に出ているのですが)
これはオペアンプの増幅率を極端に高く設定させていて飽和動作しているようです。がそれによってミラクルが発生しています。
下の周波数分析を行ってみると、入力が小さい時は奇数次倍音が発生し、入力が大きくなると偶数次倍音が大量に発生するというバランスになっています。これは常に奇数次倍音だけ出しているMXR Distortion+とはまったく異なるサウンドが出ているということですね。
④ダイオードクリッピングした後の信号の波形と周波数分析
2本のダイオードによって、波形の上下を切り捨てる回路はMXR Distortion+と同じで、プラスマイナス500mVでダイオードがクリッピングしているのが判ると思います。
波形がちょっとななめになっているのは、更に後段のトーン回路の影響だと思います。
ここでの周波数分析を見ると、ダイオードクリッピングによって更に倍音が豊かになっているようですが、初段が生む偶数次倍音が引き継がれているのが判ります。
⑤BeeGeeの最終出力の波形と周波数分析
BeeGeeのペダルとしての出力波形がこちら。
トーン回路を通過していますのでこのように変形しています。
が、周波数分析をすると、ダイオードクリッピングした後の倍音の傾向のままです。
この周波数分析を見ると、入力信号の値によって倍音構成が刻々と変化するのが判ります。
これはBeeGeeがまさにFUZZ的なサウンドである特徴が現れていると思います。
トーンコントロールの周波数特性を確認
BeeGeeはディストーションのコントロールは出来ないのですが、トーンコントロールは搭載されていますので、周波数特性も見てみます。
典型的なミッドブースト回路ですが、ピークが300Hz~400Hzとやや重心が低いようですね。
その一方で大きくローカットされているのは、現代のトランスペアレントなペダルとは異なってやはりレトロなサウンドということになると思います。
YouTubeの動画で Roland AF-60 BeeGeeのサウンドを確認してみる
BEEGEE FUZZということで、やはりFUZZペダルとしてサウンドレビューしています。
AF-60 BeeGeeのクローンBYOC B.G.Fuzzを鳴らしている動画です。倍音からトーンまでそっくりですね。
Roland AF-60 BeeGeeまとめ
BeeGeeって単純なオペアンプディストーションでは無くとてもおもしろい回路なのが判りました。
- 一見よくあるオペアンプでのハードクリッピング回路のようで実は、トランジスタ、オペアンプ、ダイオードクリッピングの3段歪み回路。
- 入力レベルに応じて複雑かつ大量の偶数次倍音を発生するミラクル回路。
YouTubeにアップされているBeeGeeの動画をみても、通常のオペアンプを用いたディストーションとはまったく違う音が出ているのでも判ると思います。
今回のシミュレーションお勉強で判ったのはAF-60 BeeGeeは単なるハードクリッピングディストーションではないということですが、RolandはBeeGeeをFUZZとして開発されたということなので当然といえば当然かもしれません。
もしかしたら、RolandはオペアンプでFuzzFaceを作りたかったのかもしれませんね。(単なる推測ですが)
ということで、もう一度オペアンプハードクリッピングディストーションペダルの歴史を振り返ると
1974年 MXR Distortion+ 登場 →こちらでお勉強済み
1975年 Roland BeeGee登場 → 今回の記事
1978年 ProCo Rat登場 → こちらとこちらでお勉強済み
1978年12月 BOSS DS-1登場
なので、次のお勉強はBOSS DS-1をやってみたいと思います
まだ続くよ!(^^
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