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ビンテージMXR Distortion+の音本当にハードクリッピング?と感じたのでシミュレーションで確かめてみることにした


OCDのシミュレーションやるって言ったのに再度Distortion+に方針変更した理由

さて前回の記事で、Fulltoneの製造終了ということでOCDをシミュレーションしてみるわ、と意気込んでみたのはいいですが、すいません方針変更いたしまして、ディストーションペダルのハードクリッピング回路って本当にそうなの?を確かめる記事に変更しました。

それはいつもお世話になっております いきすぎた_DIY( @ikisugita_DIY )さんがゲットした1980年製のビンテージMXR Distortion+の素晴らしい枯れたサウンドってどうして出ているの?というお題を頂いたのがきっかけです。

それをきっかけとして挙句の果てには私も同じ1980年製のDistortion+をゲットしてしまい(いきすぎさんのご紹介W)ましたorz

更に更にこちらもお世話になっております delrin( @delrin500_96 )さんからもう1台の1980年製のMXR Distortion+をお借りすることになりなんと我が家に3台の1980年製MXR Distirtion+が集まってしまったので緊急特集企画開始です!

シミュレーションはしていたものオシロスコープソフトで観察するとなんか違うのでは?と感じて来た

さて、Distortion+は前回軽ーくシミュレーションしておりました。こちらの記事です。

MXR Ditortion+でこのシミュレーション結果と、3台の’80 MXR Distortion+の出力波形をオシロスコープソフトで眺めていたりしていると、どうやらダイオードによるハードクリッピングの動作は想像していた動きと違うのかも?という感じがしてきました。

よく言われているハードクリッピング回路とソフトクリッピング回路の違い

で、一般的にオペアンプ+ダイオードによるクリッピング回路は、ハードクリッピングとソフトクリッピングの2種類があるということでこんな感じで説明されていることが多いと思います。

  • ハードクリッピング
    • 所謂ディストーションペダルの回路。
    • MXR Distortion+、RAT、BOSS DS-1, Fulltone OCDなど
    • 出力信号とアースの間に上下方向のダイオードを付ける。
    • ダイオードの特性によってある電圧でバッサリ波形の上下をカットする。
    • バッサリカットするのでワイルドな歪になる。
    • 有無を言わさない深い歪が得られる。
  • ソフトクリッピング
    • 所謂オーバードライブペダルの回路。
    • Ibanez Tubescreamer 、BOSS OD-1、 Fulltone FullDriveなど。
    • オペアンプのゲインループに反対方向に並列配置したダイオードで信号を戻す。
    • ダイオードの特性によって一定以上の増幅が制限される。
    • 緩やに波形をカットするので柔かい歪になる。
    • 原音のニュアンスが残る比較的浅い歪となる。

で、実際下の図はDiatortion+とほぼ同じハードクリッピング回路(ゲルマニウムダイオード)と、チューブスクリーマーとほぼ同じ回路(シリコンダイオード)でシミュレーションしてみた結果です。

まさにソフトクリップとハードクリップっぽい波形の結果が出てきました。が、しかしこれはゲインをかなり高く設定した時の波形なのです。

なので実際に弾いてみて感じた低いゲインの領域での歪みはどうなっているのかを再度シミュレーション確かめてみます。

オペアンプのゲインが低い時のハードクリッピングとソフトクリッピングを観察

下の図のように、3つのシミュレーション回路を準備しました。

  1. クリッピング無しの増幅回路
  2. 出力側にクリッピングダイオードを付加したハードクリッピング回路
  3. ハードと同じゲインと音量になるように調整したソフトクリッピング回路

を準備してみました。

こちらが出力した波形です。入力が200mVに対しクリッピング無しの出力では400mVになっていますので2倍に増幅していることになります。

で、ハードクリッピングのダイオードによって波形の頭が潰れた波形になりました。正にダイオードで一定電圧以上が制限された結果、波形に歪みが発生しているということですね。

更にそれに対してソフトクリッピング回路のゲインと音量を調整して合わせ込んだのが上の赤いグラフ線です。ほぼ重なっていますね。

そしてこれらの結果をFFTによる周波数分布の比較グラフを出してみます。

赤いハードクリッピングと青いソフトクリッピング共に、3KHz、6KHzの奇数次倍音が発生しています。
つまり歪み(ディストーション)が発生していることになります。

このように低いゲインの領域では、ハードクリッピングもソフトクリッピングもほぼ同じ傾向の歪が発生しているということが判りました。

ゲインを上げてハードクリッピングとソフトクリッピングを比較してみる

次にゲイン(増幅率)を上げて調べてみます。ソフトクリッピングはゲインと音量を調整しています。

こちらが出力波形ですが、クリッピング無しでは3.25Vあたりまで増幅しています。入力が200mVですのでけっこう増幅していますよね。
ですがハードクリッピングの波形に対しソフトクリッピングのゲインと音量を調整してほぼ同じ波形に重ねることが出来ました。

この時点でのFFTを見ると3KHz、6KHz、7KHz、9KHz、、、、、と奇数次倍音が多く発生し歪が増しています。
しかしソフトクリッピングでも同じような歪みの周波数分布が得られていることが判ります。

更に確かめる為にハードクリッピングの波形のみ拡大してみました。
よく知られたバッサリ切られた波形になっていません。まるでソフトクリッピングですね。

このように、オペアンプで3.25Vまで増幅したのをゲルマニウムダイオードによって250mVとかなりクリッピングしている状態でも、ソフトクリッピングと同じ音色になっていることが判りました。

更にゲインを上げると別の現象が発生してきた

さて、更にオペアンプの増幅率を上げてみるとどうなるのでしょうか?ここからクリッピング無しとハードクリッピングの2つを比較してみます。

すると、ここでオペアンプが3.5V以上増幅できなくなりオペアンプ単体で信号の飽和が発生するようになりました。
9Vの電源電圧でのオペアンプの限界ということですね。

そしてこの状態でハードクリッピングの波形を見ると、ちょっとバッサリ感が出て来ましたね!!

オペアンプを完全に飽和させて見る

更に、オペアンプのゲインを上げて飽和を深めて行きます。

こちらが出力波形ですが、オペアンプが完全に飽和しました。

そしてそのハードクリッピングの波形は、正にハードクリッピングで説明されたいた上下バッサリ切られた波形が出て来ることになります。

つまり、ハードクリッピング回路のディストーションペダルはオペアンプの飽和歪みが使われていることが判りました。

よくハードクリッピングの説明で示されているバッサリ切られた出力波形はダイオードによるクリッピングではないということだと思います。(波形の圧縮はしていますが)

オペアンプの電源電圧を上げると再びソフトクリッピングになる

更に、この結果を確かめる為に上の回路と同じゲインの設定でオペアンプの電源を9V→15Vに上げてみます。
電源電圧を高くすることで、オペアンプンのダイナミックレンジが大きくなり大信号でも飽和し難くなります。

その結果クリッピング無しでは上下6Vという高い出力でも飽和しなくなりました。

更にそれをゲルマニウムダイオードでハードクリッピングしたとしても、やはりダイオードだけでは上下バッサリ波形にならないことが判りました。

ハードクリッピング回路vsソフトクリッピング回路シミュレーション結果まとめ

こんな感じでまとめました。

  • ダイオードのハードクリッピングだけでは結局ソフトクリッピングな波形となる。
  • 本当のハードクリッピングのサウンドはオペアンプの飽和によって得られている。

さて、このシミュレーションをおこなったきかけは、MXR Distortion+を弾いてみると、DISTORTIONツマミ(つまりGAIN)がある一定以下で非常に心地よいオーバードライブ的な歪が出ていたのがツマミを上げて行くといきなりジョリジョリのサウンドが出て来る特性を感じたからで、何故それが発生しているのか?ということを確かめてみたくなったのです。

で、今回はあくまでもシミュレーション結果ですが、実はこのあと実際のペダルで波形をオシロスコープソフトで計測してみたりしていますので、私的にはこのシミュレーションはけっこう正しいのではと思っています。

しかし!実際の1980年製MXR Distortion+ では更に複雑な動作となっていることも判りました。
Distortion+の秘密はこれだけではありません、、、、、ということで次の記事では更に深掘りして行きたいと思います。(思わせぶりですいませんがいつアップ出来るか判ら無いので御免なさい)

続く





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