’80 ビンテージ MXR Distortion+ をオシロスコープで確認してみた


(前の記事)Distortion+はハードクリッピングというよりオペアンプクリッピングだった

前回の記事でMXR Distortion+などのハードクリッピングって、本当にハードクリップしているの?ということをシミュレーションで確かめてみました。

なのでこのシミュレーションに続いて今回は実機を検証する為に、’80 MXR Distortion+の実機3台と千石電商さんで購入したパーツで作った試作用コピー機を準備しました。

この4台に1Khzの正弦波を入力しオーディオインタフェイスでPCのオシロスコープソフトに取り込んで観察してみることにします。

まず1980年 MXR Distotrion+ 3台のオペアンプを確認

左の個体が私の”カバ号”です、真ん中が @delrin500_96 さんの”デル号”、右が @ikisugita_DIY さんの”いきすぎ号”の基板です。

3台共にオペアンプはマレーシア製μA741CPでした。
ただ、いきすぎ号とデル号の2台のオペアンプ型番が同じだったのに対して、カバ号の表記がちょっと違いますね。

そしてコチラが千石号です。コンパクトにまとめましたw

千石号には今でも入手可能なテキサスインスツルメンツのLM741CPを使っています。

4台のオペアンプ部拡大写真もアップしておきます。

左がいきすぎ号とデル号の、マレーシアμA741CP、真ん中はカバ号のマレーシアμA741CP、右が千石号のLM741CNです。

4台のオシロスコープ比較動画

早速、4台をオシロスコープで確認したのまとめたがこちらの動画です。

まず、シミュレーション通りハードクリッピング状態の波形はこれまでイメージしていた波形とは違って、ソフトクリッピングに近い波形ということが確認できました。

そして、それよりも驚いたのは3台のビンテージ`80 MXR Distortion+は結構な非対称クリッピングになっていたのです。

で非対称クリッピングが発生している度合いというは、、、

いきすぎ号≒デル号>カバ号>>千石号

の順番に見えます。
これはオペアンプの表記も併せて考えると、マレーシアチップで非対称クリッピングが発生していると言えます。

そして、実際のサウンドは、減衰時のジリジリ感が変化して行く感じと、この非対称クリッピングの度合いと一致するのではと思っています。

何故非対称クリッピングが発生しているのか?

では何故非対称クリッピングが発生するのか?を考えてみました。

まず疑ったのは、4.5Vをバイアス電圧(9Vの1/2)が低くなっているということです。

実際に4台の回路の電圧を計測すると、いずれの個体も4.5Vではなく3.7V近辺になっていることを発見しました。

しかしマレーシアチップだけでなく、千石号も含めた4台とも同じ電圧になっていました。これは、741タイプのオペアンプの仕様が関係しているようです。

そしてLM741オペアンプのデータシートを確認しました。
https://www.ti.com/product/ja-jp/LM741#tech-docs

上の赤丸は、Input resistance、つまり入力抵抗が最小300KΩ、通常2MΩということが示されています。

で下の回路図のオペアンプの電源部の回路で3本の1000KΩ抵抗が使われています。

741オペアンプの入力抵抗が2MΩにもかかわらず、MXR Distortion+の回路では1MΩという高い抵抗値で分圧を行なっています。
よって分圧での合成抵抗値が低くなり過ぎて4.5Vよりも低い電圧になっていることが予測できます。

で、シミュレーションでも同様に741オペアンプで1Mの抵抗を使うと4.5Vよりも低い電圧になりましが、この抵抗を10KΩにするとバイアス電圧は上昇します。

ということで、少なくとも1MΩは通常の設計では大き過ぎる値のように思えます。

この1Mの抵抗を採用した理由はMXRが意図的にDistortion+独自のサウンドを作る為なのか、それともバッテリの寿命を考えているのでしょうかね。不明です(^^

マレーシアチップの方が非対称になりやすいのは何故?

今回の測定ではビンテージのマレーシアμA741の方が、最近のLM741より非対称が激しいという結果となりました。

これはおそらくマレーシアμA741は、低コストで作る代わりに精度を落としていたのではと予測しています。

オペアンプは電源電圧でフルスイングできる訳ではいようで、入力と動作電圧に関してはこちらの記事が参考になるのかと思います。

マレーシアの半導体製造の歴史を見て見る

ここで、マレーシアでの半導体生産 という特集記事を発見しました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/qjjws1943/66/3/66_3_186/_pdf

この記事では、マレーシアが本格的に工業化を国策として推進したのが1981年以降ということですので、米国で開発されたICがちょうど普及し始めた時期に大量生産で低コストで製造する為の拠点として選ばれたということだと予測します。

そして、MXRはそのオペアンプを初めて採用したディストーションペダルです。

それは低コスト版のオペアンプが大量生産できるようになったことで、一般向けのエレキギター用のエフェクタにも採用できる価格帯になって来たということだと思います。

MXR Distortion+の非対称クリッピングのまとめ

これらのことから、MXR Distortion+の枯れたサウンドの1つの要因が非対称クリッピングにあると考えています。

  • 741オペアンプの入力抵抗低いのにも関わらず、Distortion+の電源周りでは1Mの高い抵抗値が使われたことで、バイアス電圧が低い方にズレている。
  • 80年代のDistortion+で使われているマレーシアチップは更にマイナス側のダイナミックレンジが低く、より早く飽和(クリッピング)する。
  • それに対して最近のLM741はマイナス側のダイナミックレンジ改善されている。

以上のことから、’80 MXR Distortion+は、80年前後のオペアンプがそのビンテージサウンドを支える要因になっていることを予測します。

そして次回の記事(いつになるか判りませんが)では更にMXR Distoprtion+の枯れたサウンドの秘密を探求を進めたいと思います。





コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。