#Ibanez #TubeScreamer #TS808

TSクローン4号機(TS808 筐体変更?)の基板観察&Ibanez TS9 1st Reissueと比較テストしてみた


Ikisugita_DIYさん経由でKazz51さんからTS系5台をお借りしていますがこれまで下の写真の1号機2号機3号機のテストを報告させていただきました。

TS系比較
TS系比較

今回は紺色の筐体が美しい4号機のテスト結果を報告させて頂きたいと思います。

TS808 リハウス機?
TS808 リハウス機?

TS系クローン4号機の基板と電子パーツチェック!

早速裏蓋をご開帳させていただきました。

基板の型番を見るとIBANEZ.800101となっていましたので、おそらくIbanez Tubescreamer TS808のリイシューの基板のように見えます。(間違っていたら申し訳ありません)

しかし、ただの基板リハウスではなく、ModポイントとしてはオペアンプがICソケット化されTIのRC4558P MALAYSIA が挿されていました。

で、見る限りオペアンプ以外のパーツは純正パーツから変更されているような形跡はありませんでした。(配線は電源とGNDなどがレイアウトの違いで少し変更されているようですが)

ちなみにこちらがIbanez Tube Screamer TS9 1st Reissueの基板です。

Ibanez TS9 Tubescreamer 基板
Ibanez TS9 Tubescreamer 基板

TS9のパーツはオペアンプが東芝製のTA75558BPで、ダイオードは黄色のライン(4号機は黒ライン)ですね。

で信号ラインに関連している各コンデンサとして、タンタルコンデンサ、マイラコンデンサ、電解コンデンサなどの色は違えど基本的な種類は同じですね。
(違うその理由は音質チューニングではなく各年代の部品調達の違いだと思います。)

TSクローン4号の周波数特性を測定してTS9と比較

基板チェックの後はペダルの周波数特性を計測してみます。

こちらがTSクローン4号機の周波数特性の計測結果で、OVERDRIVEノブを0、2.5、5、7.5、10に設定した上で、更にTONEノブを0、2.5、5、7.5、10に変化させて記録したものです。

このグラフから抽出してTS9 1st Reissueの結果と比較してみます。

こちらがOVERDRIVE = 0での比較です。
これがTS回路の基本的周波数特性になるとおもいますが、このグラフを見ると、10Khz以上で主な違いが発生しているように見えます。

こちらがOVERDRIVE = 5での比較です、こちらもTS9と4号機の違いは10KHz以上に表れていますね。

こちらがOVERDRIVE = 10での比較です、こちらも同様に違いは10KHz以上に表れていますね。

ということでこれらの3つのグラフの10KHz以上を抽出してみました。

TS9(緑)に対してTSクローン4号機(赤)はどのOVERDRIVEの位置でも10KHzの領域が同じ幅で上振れしていることが判りました。
これは以下の理由が考えられます。

  • オペアンプの違いによる高域周波数特性の違い
  • EQを構成するコンデンサと抵抗の誤差

ということになると思いますが、まずはオペアンプの違いを検証するには流石にお借りしているペダルで差し替え実験するのは気が引けますので別の記事で試してみます。

で次にコンデンサや抵抗の誤差ですが、オペアンプ1段目の51pFのコンデンサに着目してみました。
このコンデンサは高域の発信を抑える位相補償や、僅かながらハイカットとしての役割があると思います。


でTubeScreamerではここにレトロなディスクタイプのセラミックコンデンサが使われていますね。

でこのタイプのコンデンサは誤差が大きく、最も特性変化が多いコンデンサの1つであることは、Distortion+の検証記事でも扱っていますので参考にして頂ければ幸いです。

ということで、ディスクタイプのセラミックコンデンサは平気で20%以上の誤差が発生するのが普通ですので、その場合どのような違いが周波数特性に表れるのかをシミュレーションで確かめてみることにしました。

位相補償コンデンサの誤差をシミュレーションしてみた

なので、今回はTSの1段目の位相補償コンデンサの51pFをプラスマイナス20%ズレていると仮定して、41pFと61pFの2つの条件でシミュレーションしてみることにしました。

シミュレーション結果は以下の通りです。

このシミュレーション結果は、今回のTS9とTSクローン4号機の違いと同じように10KHz以上でのレベルの違いに表れているように思います。

まぁこれで違いが全て説明出来ているのでは無いので、1つの可能性と思ってください。

それよりも、私のIbanez TubeScreamer TS9 1st ReissueとこのTSクローン4号機の周波数特性はほぼ重なっているという方が重要だとおもいます。

まぁ同じ4558タイプのオペアンプですのである意味回路的な互換性はあると考えると当たり前の結果かもしれません。

(後日、TS回路を自作してオペアンプの違いを検証した記事もアップしますので少々お待ちください。)

で、10KHz以上の高音の違いですが、TSの回路のEQではそもそもカットされている上に、通常のギターアンプのプリ部、ギター用SPではいずれも大きく高域がカットされますので結果聴感上はほぼ差が無いのではと予測しています。

TSクローン4号機のオシロ波形と倍音特性をTS9と比較チェック

こちらがTSクローン4号機の倍音OVERDRIVEツマミを上げながら、入力信号の大きさを上げて行くテストの結果を動画にしたものです。
(無駄に長い割にポイントが判らないとおもいますので、見る必要はありませんw)

上の動画では判りにくいとおもいますでポイントを抽出してみました。

OVERDRIVEツマミが5の時の入力信号が2つのレベルで比較した時のキャプチャ画像のサイドバイサイド比較です。

もうすぐに判ると思いますが基音の1KHzに対して右のTSクローン4号機の方が偶数次倍音が多いという感じです。
特に入力信号が小さい時はTS9が最初に3KHzの倍音が発生するのに対し、TSクローン4号機ではまず2Khzの倍音が発生するという違いも見れますね。

何故偶数次倍音が多いのか考えてみた

でこれまでもIbanez謹製TubeScreamerは奇数次発生マシーンということで説明しておりましたが、この4号機の最大の特徴はマレーシア製のRC4558DにModされているということです。

で、少し前に同じくマレーシア製造オペアンプが搭載されたビンテージDistortion+を検証した時の動画が少しヒントになるかもしれません。

Distortion+は741タイプのオペアンプですが、おそらくですがマレーシアで製造移管されたのはコストダウンが理由で高性能化されているわけでは無いと考えられます。
なので4558タイプのオペアンプも同様にコストダウンの為にマレーシアでせ製造されるようになったと考えられます。
(おそらく4558は家電も含めて最もポピュラーはオーディオ用のオペアンプですので当時需要が急拡大したと思いますが、その需要に対応する為大量生産する為の方策だったのだと予測できます)

一方で東芝製のTA75558Pは日本製でもしかしたら少しオーディオ的な性能を高めているようにおもえます。

これらのことから、マレーシアTI RC4558Dの方がややドリフト性能などが低いということがあると思いますのでそれが非対称の歪を生んでしまい、偶数次倍音がより多く発生するというう結果になっているのかもしれません

また、クリッピングダイオードの誤差は?という話もあるかもしれませんが、まぁシリコンダイオードは細かいVf値の違いはあれど、簡易計測器で出て来るVf値は精度が低くあくまでも参考値だと思います。(そもそもシリコンダイオードのVf値はそれほど目立つ違いは無いですし)

で実際のクリッピング動作ではVF値を超えた後の特性の方も影響し来ると思いますのでダイオードのVf値の計測だけで判断するよりもまずはオペアンプのドリフト電圧によってはクリッピング動作ポイントも変わって来る方が影響が多いのではと思います。

TSクローン4号機とTS9の倍音発生のパターンを比較

次はTS9 1st ReissueとTSクローン4号機のスペクトラムを見てみました。
この計測は3つの異なる周波数のサイン波をミックスした信号を、小さいレベルから立ち上げしばらくMAXで継続し、最後に減衰させる音源を用いたテストです。

TS9とTSクローン4号機の結果をGIFアニメにして比較出来るようにしました。

下のスペクトラム図は縦軸が周波数、横軸が時間です。(縦軸は周波数を等分にリニア表示しています)
下の3本の赤色が目立つ線が音源から入力されている信号、その他の細かい横ラインが発生した倍音を示しています。

TS9 vs TS Clone #4 OVERDRIVE=5 – Linear

やはり同じTS系ですからTS9とTSクローン4号機ほぼ同じような倍音発生パターンになっていますね。

ですがそれでもレベルが小さい時間帯での倍音発生パターンに違いが見れます。
違いが表れている箇所を拡大してみます。

拡大>TS9 vs TS Clone #4 OVERDRIVE=5 - Linear
拡大>TS9 vs TS Clone #4 OVERDRIVE=5 – Linear

これを見ると特に音量が大きくなる時間帯でもTS9が倍音がより分離しており一貫性性があるのに対し、TSクローン4号機の方はより多くの周波数の倍音が発生して変化しているように見えます。

でこちらは縦軸の表示を対数表示(Log表示)にしたGIFアニメです。
こちらの方では主に低域側の倍音が良く判ると思います。

TS9 vs TS Clone #4 OVERDRIVE=5 - Log
TS9 vs TS Clone #4 OVERDRIVE=5 – Log

同様に違いが判るように拡大してみました。

やはり、TSクローン4号機の方が入力信号レベルが小さい時により複雑な倍音が発生しているようですね。

TSクローン4号機 v.s. Ibanez TS9 1st Reissue音出してみた

今回も演奏レベルは最悪で長いので見て頂く必要は無いと思いますが、計測だけしているわけではなく、自分で実際に音を出していろいろ確認している記録と思って頂ければ幸いです。

TSクローン4号機まとめ

今回テストした4号機はおそらく、Ibanez TS808の基板をICソケット化して、筐体を変更したものだと思います。

そしてTSマニアならみんな大好きマレーシア製RC4558Pオペアンプが奢られています。

おそらくその結果、オリジナルのTS808より僅かに複雑な倍音が出るようになり一見いや一聴でちょっとエモーショナルなペダルになっているのかもしれません。

で、コンデンサなど変にModされていませんのでオリジナルTS9(TS808と回路的なEQ特性は同じ)との比較が出来て今回も個人的には非常に有用な結果になったと思います。

このペダルを貸して頂きました @kazz51さん@ikisugita_DIYさんに感謝いたします!

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