TSクローン3号機(TS9 modクローン?)の基板観察&Ibanez TS9 1st Reissueと比較テストしてみた
Ikisugita_DIYさん経由でKazz51さんからTS系5台をお借りしていますがこれまで下の写真の1号機と2号機のテストを報告させていただきました。
で最初の2機種は同じビルダーさんがそれぞれTS9とTS808のクローンとして制作されているものが判りました。で今回は下の写真右端の3号機のチェックを行います!
さていったいこの3号TS系制作ビルダーの方はいったいどのようなコンセプトのTSクローンペダルを作っているのでしょうか?計測と試奏しながら探って行きたいと思います。
TS系3号の基板パーツチェック!
まず最初に気が付くのがTS系の標準である3つのツマミ(VOLUME、GAIN、TONE)に加えて1つのトグルスイッチが加えられているということですね。
で実際に使ってみるとフットスイッチはトゥルーバイパスではなく、TS9と同じく電子スイッチが採用されていました。
ブティック系のTSコピーモデルではトゥルーバイパスになっている製品が多いと思いますが、電子スイッチまでコピーするとパーツ数も増え、ハンダポイントも増えるもですが、そこまでコピーしているのは頭が下がりますね。
次に裏蓋を開けてみると下の写真のようにパターン側で筐体にホットボンドで裏面で固定されていておりパーツの定数や型番を確認することはできませんでした。
ただ、パターンにはハンダ盛りによる裏打ち処理が加えられていますね。こちらも工数がかなりかかる処理だと思いますので頭が下がる思いです。
で、こちらのビルダーさんの拘りをまとめると。
- パターンをハンダで盛る裏打ち処理(ちょっとフラックスが気になりますが)
- バッファードバイパス&電子スイッチまでコピー
- 小型トグルスイッチで特性を変えられるよようにしている
などの点かとおもいます。
ということで3号はオペアンプ、トランジスタ、コンデンサ、抵抗など個別パーツのチェックは出来なかったのですが代わりに周波数特性から構成を推測してみたいと思います。
TSクローン3号機の周波数特性のチェック
今回もリファレンスとしてIbanez TS9 1st Reissueの結果を比較してみます。
1号と2号はオリジナルの周波数特性とほぼ同じだったのでDRIVE=2.5での比較だけで済ましたのですが、3号はオリジナルと異なる動きをしていました。
なので、下の画像はTS9 1st ReisseとTSクローン3号のDRIVRを0、2.5、5、7.5、10ごと、TONEを0、2.5、5、7.5の合計25の条件で計測グラフ、これを更にトグルスイッチのUpとDown状態にしたものをGIFアニメで比較するグラフを作成しました。
Tubescreamerの回路は700Hzあたりを境にしてオペアンプ1段目と2段目の役割が分かれていて、1段目がゲイン&クリッピング回路で700Hzから70Hzあたりの領域をブースト、2段目はハイのアクティブトーン回路で700Hz以上~2Khzあたりをブーストするようになっているようです。
で今回TS9との周波数特性の比較を行うと3号はオペアンプ1段目のゲイン&クリッピング回路に大きく手が入れられていることが判りました。
低域側のブーストレンジがより広くなっているようで、更にトグルスイッチで低域側のレンジを拡大させる回路になっているようです。
なので、今度はTS9と3号機(トグルスイッチDown)のDRIVEを5にしてDRIVEを変化させてみたグラフはこちらです。
で、このグラフを見ると3号機のDRIVE=2.5はTS9のDRIVE=7.5と同じくらいのゲインになっていることが判りました。
こちらのグラフは3号機のトグルスイッチのUp/Downの比較。Upに対してDownの方がゲインをより拡大させていますね。
といういことで、これらのグラフから判るように3号機はTS9よりも1段目のオペアンプの低域を拡大させると共にゲインも大きくアップさせる変更がされているようです。
Tubescreamerの回路の特徴でもあり、ある意味弱点でもあるローカット問題を3号機はレンジとゲインを拡大することで改善しようとしたということかもしれませんね。
TSクローン3号機のオシロ波形と倍音特性
3号機のトグルスイッチUP、TONE=5で各DRIVE値に対して入力信号のレベルを上げて行き、その倍音特性を調べてみました。
3号機も典型的なTubescreamerの回路通り奇数次倍音の発生器になっていますが、オリジナルよりもほんの僅かですが変化に富む倍音発生パターンになっているようですね。
それよりも、周波数特性のグラフで見えた通りDRIVEが2.5の時点でゲインが十分に高く入力信号が小さいレベルでもすぐに歪み始めているのがこの検証でも判ります。
3号機は低域を拡大させてわずかにワイドレンジになっているようですが、その代わりにDRIVEツマミの位置がシビアでちょっと使いにくい特性になっているのかもしれません。
TSクローン3号機とTS9の倍音発生のパターン比較
TS9クローン2号のDRIVE=5でのスペクトラムをIbanez TS9 1st RessueとGIFにしてみました。
おそらくTS9と3号の基板レイアウトはまったく異なるようですがそれでも同じTS系の回路、見事に同じようなスペクトルですね。3号機もTubescreamer回路であるということが判ります。
次のグラフは縦軸を上と同じデータ比較ですが縦軸をLog表示にしたものです。Log表示によって低い周波数が拡大されますので、ミドル以下の比較に便利です。
この2つのスペクトラムを見ると、3号はTS9とほぼ同じ倍音の推移が見られました。
つまり3号のオペアンプ&クリッピング関係の構成はTS9とほぼ同じ(倍音の出方がやや豊富なのでマレーシア製オペアンプや例のツヤありが搭載されている可能性がありますが)ということが推測できます。
TSクローン3号機 v.s. Ibanez TS9 1st Reissue音出してみた
ということでスタジオで音を出してみました。
今回も演奏ではなく、ひたすら気になるところの音を出している貞ですのでやさしく見て聞いて頂ければ幸いです(^^
こうしてみると一見3号の方が荒々しい印象を受けますした。
しかし後で今回記事にしたような計測結果を分析してみたのですが、DRIVEツマミが同じ位置で比較すると3号の方がゲインが高いことが判りました。
またベースのレンジも広げているようで、このあたりがTSクローンビルダーの方が考えたオリジナルより元気が良いイメージを与えるというテクニックなのかもしれませんね。
TSクローン3号まとめ
今回のTubescreamerクローン3号の基板はハンダの裏打ちなどのテクニックを使われて丁寧に制作されていることが判りました。
そして計測&分析するとやはり3号TS系の基本通り奇数次倍音を発生させる特性で、オペアンプの1段目ハイカット&ソフトクリッピング、2段目アクティブハイミッドブースト回路をそのまま流用されながらも、1段目のゲインを高くかつレンジを広げるよう帰還部の定数を変更されているものと思われました。
この回路Modによってオリジナルとサイドバイサイドで比較すると誰にも元気が良いペダルになったことが判ると思います。
これは1号と2号がオリジナルとほぼ同じ定数ながらパーツの選定で差を付ける考え方で弾き込むことで違いが判るパターンでしたがが、この3号は定数の変更とトグルスイッチによってより判り易いModがされていて、買った直後にすぐにオリジナルとの違いが判るペダルということですね。
なので1号と2号の記事も参考にしてくださいね!
今回も本当に参考になりました!