シミュレーションで学習: FullTone FullDrive2 MOSFET で更に進化した回路を確認した
前回の記事では元祖TS系ペダル、FullTone FullDriveをシミュレーションしてみました。
このシミュレーションで、初期FullDriveはTube Screamerをワイドレンジ化したペダルということが判りました。
それで満足できればよかったのですが(^^、、、、
FullToneが初期FullDriveに、MOSFETクリッピングモードを追加するなど、強化したFullDrive2 MOSFETなるもの開発。
このペダルこそがFullDriveとして長年定番となっていたと思います。
そこでFullDrive FullTone2 MOSFETもシミュレーションしてみることにしました。
FullDrive2 non-MOSFET と MOSFETの回路
やはりTubeScreamerを引き継ぐ、オペアンプのよる前段ソフトクリッピング回路、後段はトーン&ブースト回路であることは変わりません。
しかし①の低域カットの定数が変わっています。
②のブーストモード&後段帰還モードは更に複雑になっています。
そして③のクリッピング部を拡大して、TSと比較してみるとこんな感じです。
MOSFETが動作する閾値電圧の差を利用して、クリッピングしているようですね。
しかも非対称クリッピング回路ですのでFullDrive2はTS系とは言いながらもOD-1のアイデアも取り入れられてるということですね。
FullDrive2 MOSFETの周波数特性
TONEのツマミ、MAX/中間/ゼロのポジションでシミュレーションしてみました。FMモード(フラットミッド)です。
ツマミを中点にした時、1KHzまでほぼフラットになりますね。
これは、TubeScreamerは中域をブーストする完全なカマボコ型でしたがで、MOSFETになりほぼ完全にフラットな周波数特性を得たということになります。
おそらくですが、これがクリーンサウンドのナチュラルさをもたらしている筈で、その後のトランスペアレント系に影響を与えたことは間違い無いのではと思います。
更にCompCutモードの搭載によって、クリッピング回路をキャンセルするモードも追加されていますので、このFullDrive2 MOSFETはTS系から今日にいたるトランスペアレントオーバードライブペダルのお手本になるオプションを備えていたことになると思います。
FullDrive2 nonMOSFET vs MOSFET のゲイン・コンプ特性のシミュレーション
初代モデルと、MOSFETモデル2兄弟の歪具合を、正弦波入力による波形と、FFTによって調べてみました。
ゲインツマミを中点にして、ギター側の出力を変えています。
まず30mVで入力してみます。
赤線:nonMOSFET
青線:MOSFET
です。
nonMOSFETの方から歪始めます。
ギターの出力を50mVにして見ると両方とも歪みはじめました。
ここで注目ポイントは2つあります。
1.nonMOSFETは3次倍音、MOSFETは2次倍音+3次倍音の歪み
2.MOSFETの方が音量が大きくなっている
次に100mVにしてもこの傾向は続きます。
ギターの出力を500mVにすると、今度はMOSFETから2次倍音が減少しました。
これはBOSS OD-1でも似たような動きを示しており、入力が大きいと美味しい2次倍音が出なくなるということがここでも現れています。
nonMOSFET vs MOSFETまとめ
- MOSFET機はFMモードを搭載し、初期型よりフラットな周波数特性を出せるようになった。
- MOSFET機はダイナミックレンジが広く、ピッキングに追従して音量・ドライブもダイナミックに変化する。
- MOSFETFET機はBOSS OD-1のように非対称クリッピング回路で、2次倍音を発生させることが出来る。
さて、次はMOSFET機にフォーカスを当てますので、nonMOSFET機のことは忘れてください(^^
MOSFETクリッピングモード vs スタンダートクリッピングモード
今度はFullDrive2 MOSFETの2つのクリッピングモードの比較になります。
まず、スタンダートクリッピングモードは、ギターの出力が小さい状態から直ぐに歪み始めます。
よって、ペダルのゲインツマミをを1/10、ギターの出力も10mVから始めてみます。
もうスタンダードモードは歪んでますね。そしてMOSFETモードはクリーンです。
ギター出力を30mVにしてみます。
未だMOSETモードはクリーンで、スタンダードモードは更に歪んでいます。
ギター出力50mVでも、MOSFETはクリーンで、スタンダードモードは更に歪んでいます。
がここで注目ポイントすべきなのは、MOSFETモードはクリーンなままで、スタンダードモードと音量が逆転したことです。
つまりMOSFETモードはダイナミックレンジが広い、つまりヘッドルームが広いと言うのでしょうかね。
次に100mVになるとMOSFETFETモードが歪み始めました。
しかし完全にコンプレッションせず音量も更に大きくなりました。
また2次倍音も発生し初めています。
500mVに至ってMOSFETモードやっとコンプされはじめていますが、ここでもまだ音量が上っています。
クリッピングモードまとめ
- MOSFETモードはヘッドルームが広く、クリーンからオーバードライブまでダイナミックにコントロール出来る。
- スタンダードモードはコンプレッションが強い。(TubeScreamerも同じ兆候がある)
FullDrive Vinageモード vs CompCutモード vs FM(フラットモード)のシミュレーション
FullDrive2MODFETは3段切り替えのモードスイッチがあります。これらのモードを試してみます。
トーンのツマミを中点にして、3つもモードの周波数特性をシミュレートしてみました。
最初の比較テストでも示しましたが、FMモードは本当にフラットですね。
一方のビンテージモードは、オリジナルのTubeScreamerよりもやや低域にピークがあるようなので、このモードを使うにはトーンをちょっと上げた方が良いかと思います。
波形とFFTも観察してみます。
CompCutモードはほんの少し歪みながら基本クリーン。
ブースターとして使う場合このモードが人気あるのも判ります。
モードスイッチまとめ
- VintageモードはTS808のようなミッドブースト。ただしちょっと重心が低い。
- FMモードはその名の通り、ミッドを抑えフラットにしたモード。
- CompCutモードはクリッピングダイオードをキャンセル、同時にFMモードが強制的に適用されるので、ブースターになる。
ブーストモードOnをシミュレーション
ブーストスイッチをOnにすると下の周波数特性を見る、ミッド以下を大きくブッシュするようですね。
ビンテージモードとの併用はかなりブーミーになるかと思います。また、ブーストスイッチを使う時もやはりトーンを上げ気味の方が良いと思います。
そしてブーストすると、2次倍音が消え3次倍音が大きくプッシュされますので広域はギラギラした音になると思います。
FullTone FullDrive2 MOSFET シミュレーションまとめ
FullToneは初期モデルFullDriveでTubeScreamerのレンジを広げました。
そして、今回のMOSFET版では、更にそれをフラットな周波数特性になるモードを設けることで、TSの根本的な特徴であり弱点でもある、レンジが狭い、ダイナミックレンジ・ヘッドルームが狭いというポイントを改善したということです。
このようにFullToneはTubeScreamerを独自のトーン回路、クリッピング回路で大きく変化させた先駆的なペダルということですね。
そして、皆さんご存知YOuTubeのbenimaruさんのレビューを聴くと、今回のシミュレーションもかなり共通な結果になっているのではと感じました。
TS系シミュレーションの旅、もうこうなったら、行き着くポイントが少し先にも見えてきましたので、もう少し続けさせてください。(^^