シミュレーションで学習:元祖TS系 FullTone FullDrive2 で進化の始まりを検証してみた
前回までに、Ibanez TubeScremer TS808をきっかけにBOSS OD-1の歴史的オーバードライブペダル2台をシミュレーションしてみましたが、いよいよ止まらなくなり(^^ 再びオーバードライブペダルの歴史をシミュレーションで探る旅に出ることにしました。
歴史を探る編、第三弾は、1993年に創立した米国のブティックペダルメーカFulltone社による元祖TS系ペダル FullDrive FullToneです。
こちらの動画で同じような年代の機種で比較されていますのでちょっと参考になるかもしれません。
FullDriveのシミュレーション回路
FullTone FullDriveは幸いにもLTSpiceでlibデータがあるオペアンプ4558が使われいます。
ただ、ダイオードは見つからなかったのですが、シリコンの小信号のスイッチングダイオードですのでシミュレーションにかけてもそれほど大差無いと思い(実際の聴感上の音は違うと思いますよ)ますのでそのまま進めることにしました。
以下がTS808/TS-9の回路とFullDriveの回路を並べてみましたが、やはりTS系という言うだけあってTS808/TS9がそのまま参考にされていることが判ります。
点線で囲んだところが、TS-9との差になりますが、上の①と②以外の違いは殆ど結果に現れてきませんでした。
FullDriveの回路でまず特徴を挙げるとして、前後にTS-9と同じくトランジスタバッファ回路が付けられているということです。
おそらくTS808では電子スイッチの回路を安定させる等で必用がありバッファ回路が付けられていると思いますが、FullDriveはトゥルーバイバスが採用されているにも関わらず、バッファがそのまま残されています。
事実、TimmyやJanRay等の回路を見るとこのようなバッファは省略されていますが、実は特に入力のバッファがある無しでは、かなり音の差があるようでした。
FullToneはそこまでしてTSの音を流用したかったに違いありません。
次の特徴は、②の回路で2段目のオペアンプから初段のオペアンプにフィルタによって特定周波数の帰還がかけられているということで、これはスイッチでOn/Off出来ようになっています。
FullDriveの周波数特性
下のグラフですが
- 赤線:TS808/TS-9
- 青戦:FullDriveブースト時
- 緑線:FullDriveノーマル時
まず①の部分はTS808と定数が違いますので、これで中域が大きくブーストされるます。
そして②をOnにすると、中域が抑えられます。
結果、TS808よりやや音量が大きく、低域と高域がよりなだらかになっています。
つまり、FullTone FullDriveの周波数特性は、TSの極端な低域と高域のカットを若干和らげ、よりフラットで現代的な(FullDrive自体もけっこう昔ですが)サウンドに仕立て直したという感じですね。
その上でBOOST中域のブーストスイッチによって、TSよりもファットでアンプをプッシュできるという構成のようです。
で、TONEをMAXにしてみると、、、
いずれも高域側にピークがシフトしますが、FullDriveの非ブーストモード(緑)ではより高域にピークが来るように設計されています。
更に、トーンはゼロにしてみると、、、、
FullDriveはTS808より更に、低域側にピークを与えているようです。
これらのことから、FullDriveの基本的な周波数特性は、TS808よりも基本はほんの少しフラットで、トーンコントロール回路はより周波数レンジの幅が広くされているようです。
そしてブーストを解放することでTS-9よりもファットでパワフルなサウンドにしています。
これらのことから元祖TubeScremerよりかなり多彩なサウンドバリエーションを得ているようです。
FullDriveのゲイン/コンプ特性
DriveをMaxにして、TS808とFullDriveの波形を比較してみると大変似たサウンドが出ていることが判ります。というかほぼ回路が同じなので同じような傾向になるのは当たり前ですが、、、、
FFTするとこんな感じですね。
FullToneの方がややコンプが深く少し暴れている感じに見えます。
ただ、3次倍音が同じくらいなので基本フィーリングとしてはやはりTSの歪が再現されていると思います。
次にDRIVEをゼロにしてみました。
FFTすると3次と5次が同じような倍音構成ですね。
FullTone FullDrive シミュレーションまとめ
ということで、FullToneはIbanez TubeScremer TS-9の回路を参考にして、より幅広いアンプもドライブ出来るようにした、TS系ブティックペダルの先駆けペダルであることが理解できました。
おそらく1990年代に入り、CDの時代になったことでオーディオの性能が向上したことでギターサウンドもこれまでのようなミッドレンジ重視からもう少しワイドレンジに変化して行ったということも要因なのかもしれませんね。
ということで、元祖ブティック系、元祖TS系として一世を風靡したFullTone FullDrive2 はTubeScremer回路のゲインアップとワイドレンジ化をもたらしたと言えると思います。
サウンドハウス
FULLTONE ( フルトーン ) / Full-Drive 2 V2
FULLTONE ( フルトーン ) / Full-Drive1
FULLTONE ( フルトーン ) / Fulldrive 3 Standard
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